深夜0時近く終電組が先に帰り、このマンションから一駅分歩けば帰れる水無月・周・椿・勝の4人は、惠と飲みながら会話を楽しんでいた。 『周君ってさ、周君って呼んで良い？みー君と付き合い長いの？』 「勝、馴れ馴れしいぞ。」 (椿ちゃん、よくぞ言ってくれた！そうだぞ。お前、ちょっと馴れ馴れしいぞ。) 『えー。だって、周君はみー君と親しいみたいだし、これから会う機会も多いんだぜ。あ、俺の事も勝って呼んでね。』 (周君呼び許してねーし。あれ？最近似たような台詞を聞いた様な気がする。誰かがそんな事言ってたな…デジャヴ？) その答えを、水無月が笑いながら口にした。 「くくっ。周、何処かで聞いた台詞だな。」 (あ、俺が文月に言ったんだ。) 『お、おお。周君て呼んでくれて構わないぞ。』 『ほら、椿、良いってさ。』 『椿ちゃんも周君って呼んでくれて良いからね。』 「はい。じゃあ、お言葉に甘えて。」 『ちゃん付け？何か俺への態度と違い過ぎない？』 勝が頬を膨らませ拗ねる。 「周。」 『ん？』 「勝って周にちょっと似てるよな。」 『はぁ？変な事言うなよ。』 「あ、それ私も思いました。」 『いやいや、惠さん。』 「うん。俺も思った。勝と周君て雰囲気が似てるよ。」 「「はぁ？皆んな何言っちゃってるの？全然似てませんけど？」」 「ほら。ハモってるし。」 『みー！』 「ふふっ。冗談だよ。よしよし。」 水無月が笑顔で周の頭を優しく撫でる。 『ちぇっ、ガキ扱いするなよ。』 文句を言いながらも、水無月に触れられた途端に相好を崩す周を見て、恵は、感じたままを口にした。 「周さんは水無月さんの事がとても好きなんですね。」 『……』 周は惠の言葉に反応し一瞬言葉が詰まったが、狼狽えた様子を周りに悟られまいと、直ぐに笑顔を作った。 『あれ？バレちゃいました？みーは俺の大切な人なんですよ。みーも俺と同じ気持ちだろ？』 「はいはい。俺にとっても周は大切な人だよ。」 『やっぱりな！みー、大好きだよー！！』 そう言って水無月をキツく抱き締める周の指先が僅かに震えていた。 「周、苦しいって。」 水無月が周の背中に手を回して軽く叩く。 『ははっ…ごめんごめん。さっ、飲もうぜ！惠さんも！』 周が冗談混じりに漏らした本音を、皆が気付く事なく笑顔を浮かべる中、只一人、周と向かい合わせに座っていた惠だけが、彼の水無月への想いに気付いていた。