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第45話 不可解な言動。

頭を撫でる。只それだけの行為の筈が、そのまま彼の耳朶を指でそっとなぞり、頬に手の平を這わせた。そして唇に触れようとした時、周の身体がピクリと動いた。 『…恵さん?』 戸惑いを含んだ周の声で恵は我に返り、慌てて手を離す。 「すみません…」 『もしかして、俺の事慰めようとしてくれたんですか?』 目の前に居る彼を慰めたかっただけなのだろうか?恵は自身の取った行動が理解出来ず、其れを素直に伝えた。 「良く…分からないんです。すみません。」 『そっか、でも、何か嬉しかった。ありがとう。』 不可解な言動をした自分に対して、優しい笑顔を向けてくれた彼に、恵の胸の鼓動が小さく波立つ。 「あの…」 『そろそろリビングに戻りましょうか?』 「あ…そうですね。」 リビングへ戻ると、周は水無月の隣に座り、彼に笑顔を向ける。 『みー、お前酔ってるだろ。顔が赤いぞ』」 「もう少し良いだろ?」 『後一杯だけだぞ。そしたら帰るからな。』 「んー、分かった。」 『よし、良い子だ。』 周が水無月の頬を撫でると、水無月は彼に笑顔を返した。その情景が余りに自然で、恵は2人を微笑ましく思う反面、切ない想いが込み上げて来た。 『…さん、恵さん、俺の話聞いてくれてます?』 「え?ああ、すみません。勝君、何か言いました?」 『だーかーらー。好きな人に振り向いて貰うにはどうしたら良いのかって話ですよ。』 「好きな人ですか?勝君には恋人がいるじゃないですか。」 『へ?俺、フリーですけど?なんなら絶賛片想い中ですけど?』 「え?椿さんと付き合ってるんじゃないんですか?」 『いやいや、俺の好きな人は女の子だし。』 「ああ、そうなんですか。私はてっきりお2人が付き合ってるとばかり。」 『あー…何でだろ。誤解してる人多いんですよ。一々否定するのも面倒だしなぁ。俺、セクシャルマイノリティーに偏見は無いし、男同士も女同士でも、お互いが好きなら関係ないと思うけど、椿とは無理ですね。』 勝の言葉に椿が口を挟む。 「どうして俺とは無理なんだよ?」 『お前を恋愛対象として見た事無いし、お前も俺を意識した事無いだろ?』 「うん。無いな。」 『だろ?友達で居たいと思ってる相手と無理にセックスしたって良い事なんて一つもねーじゃん。』 勝の放った言葉で、水無月の表情が微かに強張り、周は、無言のまま彼の手を握った。

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