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第47話 困惑。

『みー、足元フラフラしてるぞ。後10分ぐらい歩くけど大丈夫か?』 (最後の方ピッチ早かったからな…あんな話聞いたら飲まずにはいられないか。) 「んー、大丈夫。あっ…」 (あぁ…言った側から転んでるし。) 『膝、見せてみろ。』 水無月の正面に周り込み、彼の脚を覗き込んだ。 『少し切れたな…砂利が付いてるから取るぞ。』 「痛っ。」 『すぐ終わるから我慢しろ。』 周はバックパックからミネラルウオーターが入ったペットボトルを取り出し、水無月の膝上に垂らした。 「んーーーっ!」 『終わったぞ。』 「痛くて歩けない…」 『酔うと甘えてくるところ、変わらないな。ほら、おんぶ。』 背中を向けてしゃがみ込み、水無月が背におぶさると、周は立ち上がりゆっくりと歩みを進める。 「ふふっ。」 『どうした?』 「昔もおんぶしてもらった事が有ったなぁって…懐かしいな。」 『あの時かぁ。』 「あっ。」 ポツリ。ポツリ。 『ん?』 「雨、降って来た。」 サーーーッ。 『走るぞ。しっかり掴まってろよ。』 周が水無月を背負ったまま駅のタクシー乗り場に着くと、既に10人程並んでいた。 『傘と飲み物買ってくるから待ってろ。』 最後尾に水無月を降ろし、改札口に隣接するコンビニへと駆けて行った。 「雨、止みそうにないなぁ。それにしても車が多いな。週末だからかぁ…」 ロータリーに次々と入って来る車を眺めていると、水無月の目が見覚えの有る一台の車を捉えた。ブルーメタリックカラー。車種も同じだ。 「まさかな。」 車が停車し、運転席から降りて来た人物に目を見張った。文月が傘を開き、改札口の方へと歩いて行く。 「文月?」 (どうして此処に彼が居るんだ?) 『みー、お待たせー!』 コンビニから戻った周が水無月の元へ駆け寄ると、身動ぎ一つせずに一点を見つめている水無月に気付き、彼の視線を追う。 『あれ?文月だ。何でこんな時間に?みーを迎えに来たのか?』 「文月は俺が此処に居る事を知らない。」 『なら、何で…』 「文月〜〜!」 困惑しきりの2人の背後から女性の声が聞こえ、一瞬遅れて降り向くと、文月が傘下に声の主を引き入れていた。後ろ姿で顔は見えないが、服装からして若い女性のようだ。彼が手に持っていたパーカーを女性に羽織らせると、彼女は彼の腕に自分の腕を絡ませた。文月はそのまま助手席に女性を乗せ、水無月達に気付く事無く車を走らせて行った…

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