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第52話 大切な友人。
周は喉仏を上下し、水無月が放った熱をゴクリと嚥下(えんか)した。
「もしかして、俺の全部飲んだ…?」
『うん。飲んだ。何で?』
「何でって…」
『以前もそうしてたろ?』
(だって、あの頃は…)
『みー、そんな事より、少しは気が紛れたか?』
「え?あ…うん。」
『そっか。じゃあ、俺、ちょっとトイレに行って来るよ。』
「トイレ?」
『うん。此の状態のままは流石にキツいからさ。』
少し困った様に頭を掻く周の中心部に視線を落とすと、彼の其れは、当然の如く勃起し反り返ったままだ。己の欲望は必死に堪えて、水無月を気遣い、笑顔を向けてくれている。
周はいつもそうだ。凪と別れて父親とも疎遠になり、酷い状態だった俺を周は傍で支えてくれた。自暴自棄になり、毎夜見知らぬ相手と寝ていた俺を見兼ねて、『眠れないなら俺だけにしろ。』そう言って抱き締めてくれた。俺が眠れる様になるまで、幾度と無く肌を重ねた。
以前、彼にどうしてそこまでしてくれるのか尋ねた事が有る。周は照れ笑いを浮かべながら俺の問いに答えた。
「お前は俺にとって特別だから…大切な大切な友達だから…」
彼が傍に居てくれたから眠れる様になった。彼が支えてくれたから立ち直る事が出来た。周が傍に在てくれて幸せだった。だからこそ、離れなきゃいけない…そう思った。だけど…いや、もう考えるのは止めよう。
俺が、好きな人は文月。そう、それで良い。今から俺がしようとしてる行為は、彼を傷付けてしまう事になるかもしれない。朝を迎えたら自分がした事を後悔するかもしれない。
それでも…今だけは、この瞬間だけは、俺の為に涙し、俺に笑顔を向けてくれる、大切な大切な友人の事だけを想いたい。
水無月はゆっくりと上半身を起こし、周を見つめ、彼の口端に付いた自身の蜜を指の腹で拭った。
『みー…?』
周が戸惑いの表情を浮かべる。
(ごめん…俺は本当に自分勝手な人間だ…)
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