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第88話 好きな人は。

「あらっ、過去形?今は、くたびれたおばちゃんかしら?」 『そ、そんな事言ってないだろ。今だって充分、き、綺麗だよ。』 顔を真っ赤にして照れ笑いを浮かべてる2人が、水無月と俺の瞳には、とても幸せそうに映った。 「俺も大人になって、プロポーズする時には、紫陽花の花をプレゼントする!」 『そうか。水無月が大人になったら、俺がスーツを仕立ててやるから、それを着て愛する人にプロポーズすれば良い。』 「うん!そうする!」 水無月が興奮気味に話すのを聞きながら、気付けば自分もおじさんにおねだりしていた。 『おじさん!俺にもスーツ仕立てて!』 『おっ、周もか。よしっ!お前にも最高のスーツを仕立ててやる。成功したら俺達にも紹介しろよ。』 「周ちゃんとみーは、どんな女性と出逢うのかしらね。楽しみだわ〜。」 『俺がプローズする相手は、もう決まってるんだ。』 「そうなの?」 『うん。』 「え?周、お前好きな子いるの?俺そんなん初めて聞いたけど。」 『お前だよ。』 おじさんとおばさんの興味深げな顔と水無月の不満気な顔が、俺の一言で戸惑いに変わった。 「えっと…プローズする相手ってのは、普通好きな人だよな?」 『当たり前だろ。俺が好きな人はみーだから、プロポーズする相手もお前しかいないじゃん。』 「周ちゃんは、みーの事が好きなの?」 『周、水無月は男だぞ?』 『おじさん、おばさん、俺じゃ駄目かな?俺、水無月とずっと一緒に居たいんだ。』 2人は顔を見合わせ、困惑の色を浮かべた。今にして思えば、水無月の両親の前で男の俺が告白して、結婚の許可まで貰おうなんてかなり非常識な話だ。 けれど、あの時、俺の中では既に心が決まっていた。生涯を共に過ごしたい人は水無月以外には考えられない。傍に居たいのは、傍に居て欲しいのは、他の誰でも無い。彼だけだと… 「おいっ!勝手に話を進めるなよ。それに俺達男同士だぞ。結婚なんて出来る訳無いじゃん。」 『俺にはお前しかいない。これから先も、この想いは変わらない。』 「そ、そんなの分かんないだろ?」 『変わらなかったら?俺がお前をずっと好きでい続けたら?俺を選んでくれる?』 「えっと…」 『俺の事嫌いなのか?』 「嫌いな訳無いだろ!俺も、す…すきだよ。でも…」 『じゃあ、こうしたら?』 俺達のやり取りを黙って聞いていたおばさんが、間に入り、話をし始めた。

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