89 / 112

第89話 15年後に。

「貴方達はまだ11歳で子どもでしょ?これから大人なっていく過程で沢山の出逢いが有ると思うの。」 「うん。」 『うん。』 「もしかしたら、違う人を好きになる事も有るかも知れないわ。」 『おばさん!俺の気持ちは変わらないよ!』 「周ちゃん、まだ続きが有るから、最後までおばさんの話を聞いてくれる?」 優しく諭すように言われて俺は頷くしか無かった。 「貴方達が大人になって、それでもお互いが一緒にいたいと思うのなら、私は反対はしないわ。」 『おい!母さん!そんな無責任な事言ったら…』 「でもね。同性同士の恋愛は、世間からの風当たりは強いし、結婚も出来ないの。多分貴方達が大人になった頃でも、それは変わらないと思う。辛い思いをする事も有ると思うわ。」 『そ、そうだ。母さんの言う通りだ。それに男同士で一緒になったら、子どもは望めないんだぞ。寂しいだろ?』 「貴方が孫を抱きたいだけでしょ。」 『君だって、孫を抱きたいだろ?』 「そりゃそうよ。でも、私達の願いが、この子達の幸せになるとは限らないわ。私は世間体の為に、周ちゃんとみーが好きな人を諦めなきゃいけないなんて事にはなって欲しくないわ。貴方だってそう思うでしょ?」 『そうだけどさ…』 おばさんに子ども達の幸せと言われ、おじさんは不満気な顔をしながらも、口を噤んだ。 (おじさんとおばさんを困らせたい訳じゃないのに…) 「そっか…それなら…俺は周と結婚しない。」 「どうして?私達が孫の話をしたから?」 (子ども…自分の子どもが欲しいから俺とは結婚したくないって言われたら、反論出来ない。) 「違う。」 「皆んなにからかわれるのが嫌だから?」 「違う。」 『俺と居たくないって事か?』 「そうじゃない。」 『じゃあ、何だよ?』 「言いたくない…」 ( みーは、頑固な所が有る。穏和な性格だけど、一度決めたら引かない。理由を聞いてもきっと言わないだろうな…) 『みー。お前、俺の事好きって言ったよな?今はまだ、そういう意味じゃなくても良いから、好きか、そうじゃないかだけ答えて。』 「好きだよ。」 『そっか。』 皆んなの視線が自分に集中してるのを感じながら、暫しの沈黙の後、俺は決意を口にした。 『それなら、10年後。は、まだ早いかぁ…大学生ぐらいだもんな。男には、包容力と経済力が無きゃ駄目だよな。うーん…じゃあ、15年後!』 「は?」 『15年経っても、俺の気持ちが変わらなかったら、リベンジさせろよ。』

ともだちにシェアしよう!