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第103話 呟き。
『一族経営でしてね。虎の威を借る狐ってやつですよ。』
驚いた顔しちゃって悪かったかな。多分今までも同じ様な反応をされて来たんだろうな。
『お若い方なのに専務ってのは驚きましたけど、卑下する必要は無いと思います。一族経営だからって、能力が無ければ専務なんて役職には就けないし。ってペーペーの俺が言うのも何ですけど。』
きょとんとした顔してる。余計な事言っちゃったかな。
「こらっ。松永君、高峰専務に向かって失礼だぞ。」
『す、すみません。』
『いえ、構いませんよ。面と向かってはっきりと仰っる方は珍しいので、少々面食らっただけですから。』
『良かったぁ~。あ、すみません。』
『松永さんは正直な方なんですね。』
『恵ちゃんにも同じ事言われましたけど、別に正直者って訳じゃないですよ。』
『…恵ちゃんとは?』
『あ、友人です。』
『友人ですか…』
口角は上がってるのに目が笑っていない。ってか微妙に怒ってる気がする…
俺、変な事言った?
「高峰さん、皆揃いましたので、そろそろ会議を…」
『そうですね。あ、部長、私の事をさん付けで呼ばないで下さい。高峰君で結構ですよ。』
「いや、そんな、、」
『お気遣いは有難いのですが、此処ではそう呼んで下さい。私は外部の人間ですし、貴方の上司では有りませんから。』
「そうですか?では、お言葉に甘えてそうさせて頂きます。」
『はい。宜しくお願い致します。』
さり気なく部長を立ててる。若いのに凄えなぁ。案外歳食ってたりして。
『あのぉ~。』
『はい?』
『高峰専務は俺より少し歳上ぐらいに見えますけど、もしかして結構お歳を召してるんですか?』
『……』
肩が震えてる。ヤバい…怒らせちゃったかな。
『くくっ。はははっ。』
あれ?
『高峰さん?』
『いや…くくっ。松永さんは本当に面白い方ですね。』
『はぁ…』
「松永君!!」
部長が顔真っ赤にして怒ってる。もう黙ろう。
「皆さん席に着いて下さい。会議を始めますよ。」
プロジェクトリーダーである次長の一声で皆が着席する中
『松永周…もっと嫌な奴だったら良かったのに、残念だな。』
高峰がポツリと呟いたのを誰も気付かずにいた。
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