103 / 112

第103話 呟き。

『一族経営でしてね。虎の威を借る狐ってやつですよ。』 驚いた顔しちゃって悪かったかな。多分今までも同じ様な反応をされて来たんだろうな。 『お若い方なのに専務ってのは驚きましたけど、卑下する必要は無いと思います。一族経営だからって、能力が無ければ専務なんて役職には就けないし。ってペーペーの俺が言うのも何ですけど。』 きょとんとした顔してる。余計な事言っちゃったかな。 「こらっ。松永君、高峰専務に向かって失礼だぞ。」 『す、すみません。』 『いえ、構いませんよ。面と向かってはっきりと仰っる方は珍しいので、少々面食らっただけですから。』 『良かったぁ~。あ、すみません。』 『松永さんは正直な方なんですね。』 『恵ちゃんにも同じ事言われましたけど、別に正直者って訳じゃないですよ。』 『…恵ちゃんとは?』 『あ、友人です。』 『友人ですか…』 口角は上がってるのに目が笑っていない。ってか微妙に怒ってる気がする… 俺、変な事言った? 「高峰さん、皆揃いましたので、そろそろ会議を…」 『そうですね。あ、部長、私の事をさん付けで呼ばないで下さい。高峰君で結構ですよ。』 「いや、そんな、、」 『お気遣いは有難いのですが、此処ではそう呼んで下さい。私は外部の人間ですし、貴方の上司では有りませんから。』 「そうですか?では、お言葉に甘えてそうさせて頂きます。」 『はい。宜しくお願い致します。』 さり気なく部長を立ててる。若いのに凄えなぁ。案外歳食ってたりして。 『あのぉ~。』 『はい?』 『高峰専務は俺より少し歳上ぐらいに見えますけど、もしかして結構お歳を召してるんですか?』 『……』 肩が震えてる。ヤバい…怒らせちゃったかな。 『くくっ。はははっ。』 あれ? 『高峰さん?』 『いや…くくっ。松永さんは本当に面白い方ですね。』 『はぁ…』 「松永君!!」 部長が顔真っ赤にして怒ってる。もう黙ろう。 「皆さん席に着いて下さい。会議を始めますよ。」 プロジェクトリーダーである次長の一声で皆が着席する中 『松永周…もっと嫌な奴だったら良かったのに、残念だな。』 高峰がポツリと呟いたのを誰も気付かずにいた。

ともだちにシェアしよう!