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第105話 ギブアンドテイク。

暫しの沈黙の後、高峰が口を開いた。 『部長はどう思われますか?』 「はひっ?わ、私ですか?」 『ええ、意見をお聞かせ願えますか?』 意見ねぇ…成功すれば我社の利益にもなるし良い案だとは思う。松永と久東が努力していたのを身近で見てきたし、彼等を応援してやりたい。只、モニター調査まで請け負うとなると人員を確保しなければならないから社長の許可が要る。 う~ん…俺の一存では決められないが、高峰グループの専務である彼が賛同してくれたら実現出来るかも知れないな。 「人員確保など解決しなければならない点も有りますが、プロジェクトを円滑に遂行する為にも参加店舗の足並みを揃えるのは良い事だと思います。」 高峰への依頼心を表には出さず、慎重な面持ちで尤もらしく意見を述べた。 『そうですね…』 机を指先でトントンッと叩きながらプレゼン資料に再度目を通す高峰の姿に皆が視線を向ける。 外部の人間である筈の彼が、まるでこの部屋の主の様だ。 『試してみる価値は有ると思います。』 「高峰さんもそう思われますか?」 『ええ、成功すればプロジェクトの足掛かりにもなりますし。只、社長へ事前に話を通すべきかと。』 「そうですね。私も同意見です。』 『では、こうしましょう。来週御社の社長と会食を予定しておりますので、松永君と久東君も同席して、社長へ直接プレゼンを行なって下さい。』 「二人が直接社長にですか?」 『ええ、部長もサポート役として同席して下さい。私の方から社長へ話を通しておきます。』 「分かりました。」 社長と会食?社長ってウチの会社の社長の事だよな。この人俺と水無月も同席するって勝手に決めてるけど、自分の意見が通らないとは露にも思ってないんだな。 『プロジェクトチームは二人を中心に今週中に具体的に話を詰めておいて下さい。プロジェクトの話し合いは会食が済んでからにしましょう。』 「「はいっ!!」」 『部長、其れで宜しいですか?』 「はい。勿論です。では、本日の会議は終了しよう。」 部長もプロジェクトメンバーも彼の指示に従ってる。 なんか…凄ぇ人だな。 『ああ、最後に一つ私からも宜しいですか?』 「どうぞ仰って下さい。」 『今回のプロジェクトに際して、御社の契約店からもリーダーを一人決めませんか?会議に加わってもらい、その方を中心に進めていきたいと思うのですが如何でしょう。』 「ああ、其れは良いですね。」 『私から推薦したい方が居るのですが…』 もう決めてるのか。 「高峰君の推薦なら間違いないですね。」 『松永君、君に説得をお願いしたい。』 『へ?お、俺ですか?!』 何で俺??社長と会食とか出来ちゃう人なら、自分で説得出来るよなぁ。 『君が彼を説得出来たら、私も君達の案を全面的に後押しさせてもらうよ。』 ギブアンドテイクって訳か。 まぁ、有り難いけど。 『分かりました。その方のお名前は?』 『葛西惠さんだ。』

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