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対談 1(side:佐藤くん)

 待ちに待った対談の日が来た。  朝から上京した僕は、対談予定時刻の午後3時まで出版社の会議室で受賞作にひたすらサインを続けた。  やがて3時になると会議室のドアがノックされ、担当さんが斉藤先生と一緒に入ってきた。  斉藤先生は背が高くすらっとしていて、テレビや雑誌で見るよりもさらにかっこよく、髪型も服もオシャレだった。 「はじめまして、斉藤先生。  佐藤みのると申します。  本日はよろしくお願いします」 「こちらこそ、よろしくお願いします。  今日は佐藤さんに会えるのを楽しみにしてたんですよ」  そう言いながら斉藤先生は僕に手を差し出す。  僕が緊張しつつその手を取ると、斉藤先生は僕の手をしっかりと握って握手してくれた。  担当さんがボイスレコーダーの準備を終えると、さっそく斉藤先生の方から話を切り出してくれる。 「佐藤さんのペンネームは、本屋で僕の本と隣同士に並ぶようにってつけてくれたんだって?」 「あ、はい。  僕、斉藤先生の本を読んで『僕もこんな小説を書いて、たくさんの人に読んでもらいたい』って思って、それで斉藤先生にあやかってペンネームを佐藤に変えたんです。  あの、勝手に名前真似しちゃってすみません」 「ああ、気にしないで。  むしろ僕もうれしいよ。  あ、佐藤さんのファンの方は本屋で佐藤さんの本を買うついでに、ぜひ隣の僕の本も買ってくださいねー」  冗談めかしてそう言うと斉藤先生はハハッと笑う。  きっとこのインタビューが文字になったら最後に(笑)がついているだろう。  そんなふうに記事になる時のことを考えて面白いことを言いつつ、ちゃんと宣伝するところはさすがプロで、そういうところも見習いたいなと思う。

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