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対談 2(side:佐藤くん)
「前は確か山田とか吉田とかそういう名字だったよね?」
「え、はい、確かに前は山田みのるでしたけど、なんでご存じなんですか?」
「実は僕、佐藤さんが最初に投稿サイトに連載した小説を読んでたんだよね」
「えっ! あのブクマの少ない小説をですか?」
投稿サイトにあげた僕の処女作は、SFという不人気ジャンルの上に冒頭から専門用語満載の読みにくい小説だったので、ブクマの数は今連載している小説の100分の1以下しかなくてあまり読まれていないのに、まさかそれを斉藤先生が読んでくれていたなんて。
「いや、確かにブクマは少ないし、ちょっと難しいからweb小説向きの話じゃないけど面白かったよ。
主人公が植物ベースの人造人間を作っていく過程がすごくしっかり書かれててリアリティがあったし、ヒロインの人造人間もいかにも植物らしい特徴が個性になってて良かった」
「ありがとうございます……!
あの小説、感想もほとんどもらったことがなかったのでうれしいです!」
書いた当時はそれなりにうまく書けたと思っていたけど、斉藤先生の小説を読んでからは欠点ばかりが目についてしまって自分でも読み返せなくなっていた小説を、その斉藤先生に褒めてもらえて、僕は有頂天になる。
斉藤先生は大喜びしている僕をほほえましそうな顔で見ていた。
「もしかして受賞作はあのSFが元になっているのかな?」
「はい。
あのSFで一番書きたかったのは『植物がベースになった人間』だったので、それだったら別にSFにこだわらなくてもいいなって、斉藤先生の作品を読んで気付いたんです。
だから、より多くの人に読んでもらえるようにって考えて、ジャンルは人気のある異世界転移ファンタジーにして、転移先の世界を植物ベースの人間が住む世界にしました」
そうやって僕は斉藤先生の質問に答える形で受賞作について語っていった。
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