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二次元は三次元に(side:斉藤先生)
「佐藤くん、寝顔もかわいいなー。」
俺のベッドで眠っている佐藤くんは、無事に俺とセックスできて安心したからか、子犬のようにあどけない寝顔をしている。
「佐藤くんはあんなにがんばってくれたのに、ほんと俺、情けなさすぎる……。」
佐藤くんが好きだと言ってくれたのに、それが信じられなくて弱腰になっていた俺に、佐藤くんは文字通り体を張ってくれた。
セックスの経験どころか恋愛経験もない佐藤くんがそこまでしてくれたのだから、佐藤くんの気持ちは本物だとわかるはずなのに、それでも俺は、最後までしたら佐藤くんがやっぱり男は無理とか言い出すんじゃないかと怖くなって、佐藤くんが1回出して寝そうになったのをいいことに、そのまま佐藤くんを寝かしつけようとして、その結果、佐藤くんを不安にさせてしまった。
最終的には無事に佐藤くんと結ばれることができたから良かったものの、自分のあまりのヘタレさ加減に情けなくなってしまう。
「それにまさか佐藤くんに『二次元』のことを聞かれるとは……」
これまで佐藤くんのあまりのかわいさに自分の欲望が暴走するのを恐れて、「佐藤くんは二次元だから触れない」と自分に言い聞かせてきたが、あれも結局は俺がヘタレだったからだ。
もしも俺にもっと勇気があったら、そんなふうに言い聞かせて自分をごまかしたりしなくても、ちゃんと真っ当に佐藤くんにアプローチして好きだと告白できていただろう。
『二次元』のことはあまりにも情けない話だから佐藤くんには話せなくて、とりあえず「秘密」と言ってごまかしてしまったけれど、佐藤くんとの付き合いがもっと長くなれば、いつか笑い話として話せる日も来るだろう。
「そのためにも、ちゃんと佐藤くんと向き合って、ずっと付き合っていけるようにがんばらないと」
男女でもそうだけど、男同士で長く付き合っていくのは難しい。
だからこそ俺は、さっきみたいに佐藤くんがまっすぐにぶつけてきてくれる想いから逃げたりしないようにしなければいけないと思う。
「だって、佐藤くんはもう二次元の俺の嫁じゃなくて、ちゃんとした三次元の恋人なんだからな」
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