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おまけ:佐藤くんのパンツ 1(side:斉藤先生)

 佐藤くんとの同居生活あらため、同棲生活は順調だ。  付き合い始めてから数日間はお互いに離れがたくて、リビングのソファーでぴったりとくっついてノートパソコンで仕事をしていたのだが、ついイチャイチャし始めて、そのまま寝室に行くというようなことを繰り返してしまい、2人とも仕事が進まなくなってしまったので、さすがにこれはまずいということになって、2人で話し合い、今は仕事の時間は仕事の時間、プライベートの時間はプライベートの時間としっかり分けるようになった。  同じ家に住みながら、仕事中は今までと同じように別々の部屋にこもって執筆するということになってしまったが、その代わりに食事中と夜のくつろぎの時間と買い出しや散歩を兼ねたデートの時はちゃんと恋人同士の甘い時間を楽しんでいる。  2人そろってのプライベートの時間を確保するために、2人とも仕事の時間はしっかりと集中するようになって、締切までに余裕を持って仕事を進められているので、結果的には仕事の方にもプラスになっている。  そんなわけで、今夜も俺たちは寝るまでの時間を2人でリビングでのんびりと過ごしている。  2人とも別々にスマホで小説を読みながらも、ぴったりと背中をくっつけて座っているのが、いかにも同棲中の恋人同士という感じで幸せだ。 「あ、そうだ。  そろそろ新刊の宣伝はじまるから服を注文しておかないと」  小説サイトに表示されていた広告でそのことを思い出した俺は、ブクマからいつも使っている通販サイトを開く。 「さい……吉高さんって、いつもセンスのいい服着てますけど、どこで買ってるんですか?」  佐藤くんはまだ『吉高さん』というのに慣れなくて、時々『斉藤先生』と言ってしまうことがある。  でも自分で気付いた時は、ちゃんとこんなふうに言い直してくれるのがうれしい。  ちなみに俺は佐藤くんのことを普段はペンネームの『みのる』で呼んで、セックスの時だけ佐藤くんが教えてくれた『(りん)』という呼び方を使っている。  風呂あがりなんかに俺が(りん)と呼ぶと、佐藤くんはセックスが始まる気配を察して挙動不審になって、それがめちゃめちゃかわいいので、この習慣は続けていきたいと思っている。  それはさておき、佐藤くんが俺の背中から自分の背中を離して肩ごしにスマホをのぞき込んできたので、俺は佐藤くんにサイトを見せてやる。 「撮影用の服はだいたいこのサイトだね。  全身コーディネートされたやつが一式セットで買えるから、自分と似た雰囲気のモデルが着てるやつ選んで、そのまま買ってる」 「ええ?  へえ、こんなサイトがあるんですね」 「……がっかりした?  みのるはセンスいいって言ってくれたけど、実際は俺自身のセンスがいいわけじゃなくて、センス良く見せるやり方がわかってるってだけなんだよね」  佐藤くんは俺のことをかっこいいと言ってくれるけど、実際のところはハリボテのかっこよさなのだ。  情けないから佐藤くんには隠しておきたいところだけれど、恋人になったのだから俺のこういう情けない部分も少しずつ佐藤くんに知ってもらおうと思っている。 「えっと、がっかりというかびっくりしましたけど、それ以上にさすがだなって思いました。  吉高さんは宣伝の時にちゃんと自分をよく見せられるように工夫してて偉いです」 「……ありがとう」  やっぱり佐藤くんはさすがだ。  俺が洋服のセンスがないなりに工夫して、少しでも印象を良くして売り上げにつなげたいと努力していることを、佐藤くんはちゃんとわかって認めてくれるのだ。

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