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第3話
「待ってこんなの学校って言えるのか」
俺はでかいスーツケースをひとつ、ふっかふかのソファの横に置いて理事長の到着を待っていた。
受付の人に(受付の人ですら全員男だった!)案内されたのはいいが、学園の中はまるでどこかのオフィスみたいな、とにかく俺がいた公立中学校とは比べ物にならないくらい綺麗で、真っ白で、ぴかぴかとした屋内だった。
まずよく考えたら、学校に受付があるのがおかしいよな?(まるで会社みたいだった)
理事長室も入ってみれば、俺が知ってる校長室とは比べ物にならないくらいの高級感が漂っていて、思わず腰が引けてしまった。
もはや社長室のように感じるくらいだ。
歴代の理事長の肖像も何十枚とあって、由緒正しい学園なのだと改めて痛感させられる。
俺の目が正しければ、飾られている写真全てにダンディーなおじさまが写っていた。
もうまじで居心地が悪い。
すでに家に帰りたい。全然汚くていいからもっと現実味のあるところで生活したい。
全てはミーハーな親のせいなのだ。
成金なくせに、もういろんなとこに四方八方手を出したがって、もう、思い出すだけで頭が痛くなる。
内定していた私立のまた別の高校を蹴ってまで金剛に無理やり入れたのだってそうだ。
夫婦水入らずの生活を得たいからまずはお前からだ、とか言って俺をほぼ監獄みたいなここにぶちこみやがって。
弟は難をなんとか逃れたが愛する弟から俺を引き剥がしたあの2人は絶対許さぬ。
色々考えていたらなんだかため息が溢れてきた。
「俺なんでこんなとこに入学してんだ……」
「いらっしゃい潮くん」
「ほうあっ!」
「どうしたの、そんなに驚かなくていいじゃない」
「あっすっすみません」
急に俺の肩に手を置いてきたのは、高貴に満ち溢れたひたすらスタイルの良いイケメンの若い男だった。
黒いベスト着る人なんてほんとにこの世にいたんだレベルのおしゃれな格好だ。
目元の涙ぼくろが印象的な訳だけど、こんなに綺麗に、まるで狙ったような位置にホクロってできるものなのか。
「いやあでも君があの潮くんかあ。なんか、あれから印象変わったね?」
「あっはい、身長もめっちゃ伸びたし、髪型とか清潔にしたので……」
「でも本当に見違えるほど変わったね。今の君は、素敵だ」
「あ、ありがとうございます、?」
あれ?
なんだかこの人、距離の詰め方がおかしい。
「あ、あの?」
「まあまあ楽にしてて」
「何を楽にするんですか……!」
いつのまにか俺の前に回ってきていたイケメンは、俺を舐め回すように見てニヤリと笑った。
いや、気分は良くないに決まっているが、何よりこの動作が似合ってることに驚いた。
これが似合う人なんているのか、と言うか誰だこいつは。
「う、っ」
「本当に素敵に成長したね。……もしかしたら君、」
輪郭をつるりと撫でられる。あっヒゲ伸びてきてないかな……?
もれなく鳥肌が止まらない。
そのまま男の顔が近づいてくる。待って。待って待って。
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