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第4話
「やめて」
思わず男の手を掴んで立ち上がってしまった。俺の胸で男の体を無理やり起こし、手首をがっちりホールド。
男は俺より少しだけ小さいみたいで、180ちょいとか?
とはいっても反抗されるわけでもなく、ただ目を丸くしてひたすら俺の顔を見つめていた。
タレ目気味な目がなんだか俺の愛するかわいいかわいい弟を彷彿とさせた。
「お兄さんなんだかかわいいですね」
「えっ」
「あっ?」
「えっ?」
「いやなんでも」
「いやあっ? ってなによあっ? って」
さっきまでのオトナなオトコはどこへ行ったのか。オタオタしだす男。
「いやいいでしょ別に」
「いやなに、俺に、かわいいって言うやつ、お前、お前くらいだよ」
「いやあなたがタレ目なのが悪いんだって」
「いや、おまえ、それは、だって」
どうしようもないじゃん、って、反発の声が徐々に小さくなっていって男の顔がだんだん真っ赤になっていくのが目に見えてわかってくる。
きっちりと整えられた真っ黒な髪の毛から見える肌はほんのりピンクだ。
オトナのオトコでも照れることってあるんだなあと思った。
「元はと言えばあなたが顔寄せてきたのが悪いんですよ。顎撫でてきたし」
「いや、だってあんなの挨拶だろ、おまえ本気にしたのかよ」
「冗談にしてはタチ悪いでしょ。あんた自分の顔見たことありますか?」
「っ俺の顔がよかったら、何か問題あるわけ?」
「俺あんまりイケメンに触れて生きてこなかったから、恥ずかしくなるんでやめてほしいです。あんたイケメンだし」
顔の距離はほぼゼロである。
……いや俺なにしてんの男に。
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