Side Natsuo ーー ーーーー 「ーーっつぅう〜〜〜！！！」 ばふりと、黒い革張りのソファーに背中から飛び込む。 「なにあれなにあれなにあれなにあれ」 おい、高柳潮。お前一体なんなんだ。 自慢というわけではないが、俺はこの金剛学園の宝石だった。それこそ誰からもモテたし、学校の人間の半分は抱いていた。 それは大学でも続いて、なんなら今でもーーって言うのは話が逸れるから置いておいて。 つまり俺はバリタチだ。 今まで抱かれたことはないし、抱かれたい、なんて思ったこともない。神に誓って。 中には、この学園の宝石であるはずの俺を抱きたいなんていう不届き者もいたが、そう言うやつは逆にガツガツ抱いてやって、何人もメス堕ちさせてきた。それくらい俺の攻め能力は強いのだ。 強いはずなのだが、 「ーーーーっ」 すき。 そう自分の口が動いた瞬間、ついに自分もこれを経験する時が来たのか、と思った。 「これが、掘られたい、ってやつ、なのか？」 思わず女子のように手で顔を隠してしまう。そわそわが止まらない。 これじゃまるで初恋した生娘じゃねえか。 「……だって」 ちょい前にニュースを散々騒がせた、でかいダイヤモンドのギネス記録の子供、そんな認識だった。 入学願書が来た時は、ああ、成金のお戯れか、と思ったし、写真に写る子供はただただもさい子供だったし、むしろこの学園に馴染めるかその身を案じたほどだった。 それくらいただの隠キャで、ただのガキだった。 それがどうだ、この学園にもいないような垢抜け加減の、ただただ美しい青年になってるじゃんか。 とりあえず、学費の納入が即時可能だったから書類パスして入学決めたが、ふざけんなよ、直近1ヶ月の証明写真を使え！ でも問題はそれじゃなくて、アイツからゆらりと漂う色気と、その言葉と声の甘さだ。 俺を可愛いって言って掘ろうとした男は山のようにいたが、あいつのには下心も何も感じず、嘘も見えず、ただただ莫大な説得力が含まれていて、俺を全て包み込んで守ってくれるようなものを感じた。 守ってほしい、なんて思ったりもしていた。 俺が、1ミリも敵わないと思ってしまうほどの、完璧なまでの理想の男が、きっとああいうのだろう。 見た目じゃなくて、所作も、中身も、思考も。 本人はきっと何も気づいてないだろうけど、あれは、きっとーーー 「考えんのやめよ」 ソファから立ち上がり、自分の机の引き出しを開ける。中にはたくさんの男を嬲る為の道具がある。 考えるとかそんなことより、これって気持ちいいのかね？ Side Natsuo END.