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第9話
「失礼します」
「おお、ちょうどいいタイミングだな大臣」
いきなり固まったかと思ったら、ふい、と顔をオレから背けて教室の扉を開けたみかさん。
『えっ、そんなに急に開けちゃ……』
と思ったけど、やっぱりこの人はできる人だった。
教室からはざわざわとした声が聞こえる。
そういえば、高等部から入学してくる人間なんてほとんどいないって聞いた気もする。
それに多分だが、みかさんが可愛いからだろうな。
「それじゃああとは大臣から話がある。俺は次の授業の準備するから先に行くわ」
「光一、次は何やるの?」
「柔道だ! ていうか生徒会の前で光一はやめろ光一は!」
「おお〜頑張れ〜」
「コノヤロ!」
なんだか笑いの絶えない仲良しそうなクラスだ。
なんだー、俺の中学と大して変わらないじゃん。安心した。
「じゃあな!」
みかさんに近づく先生。
「…大臣、次予定入れて欲しいんだけど」
「あ、はい。いいですよ」
「ありがてえや。また後で連絡する」
「はいはい」
「お、君が高柳くんか、この1-Aの担任の住吉光一だ。よろしくな」
「あっ、ええ、高柳です。よろしくお願いします」
耳打ちでこそこそと話し出した2人。丸聞こえだけど。
そして、ついでのように俺に話しかけてきた光一先生は、俺のことはほぼ見ずに去っていった。
ガタイのいい人だなあと人ごとのように思った。
「この学園は生徒主体の学校なので、先生はあまりホームルームには関わらないんです。なのでホームルームは主に学級委員長が進行したりします」
俺が固まっていると、はっとしたみかさんがこっちをバツの悪そうな顔で見てきた。
「……住吉先生は、よく、ご指名もらうんです」
「あっ、あの、はい。よくわかります」
教室から去っていく先生の顔はまるで中学生の恋する男子のようなピュアな表情をしていた。
俺が言うのもあれだわ、だって正直俺の方がピュアだし……。
たぶん、普通にみかさんのことが好きなんだろうなあ。
「じゃあ僕ちょっと生徒たちに色々前置きの話ししてくるので、呼んだら入ってきてください」
「はい」
「……嫌いになりましたか」
「はい。……はい?」
「いや、なんでもないです」
みかさんはそそくさと教室に入っていった。
入った瞬間に歓声が巻き起こった。
「進級、もとい、高等部入学おめでとうございます。高等部生徒会会長、慶光院吏音(けいこういんりおん)に代わり挨拶させていただきます。高等部生徒会副会長の大臣水華です。皆さん、お久しぶりですね」
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