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第13話
「でさあ、うちの親父がね、」
「わかる! うちの父ちゃんもそう!」
「「わーーーー!」」
まさかの庶民の登場で話が盛り上がってしまった。
親父の好きな野球チームの話、好きな弁当のおかずの話、小学校の時に遊んだバトル鉛筆の話……。
この学校に入学が決まってしまった時点で、この話はもう2度とできないのだろうなあと思っていた。
でも俺の隣にいる、まさかまさかの庶民の家庭の男の子が、その考えをあっさりとブチのめしてくれた。
ありがとう、細尾くん。
この学園のどこか斜めにそれた同性愛の考えを持たない、俺と感覚が似てる人と出会えた気がした。
「あ〜この話、同い年としたの超久しぶりだよー!!」
「俺もここでこんな話ができると思わなかった!」
「高柳くんぐらいのお金持ち、どこかとっつきにくいのかな、とか思ってたんだけど、全然そんなことないじゃん」
「いや、俺なんてそんな、所詮成金だから。てかあれ、俺のこと潮でいいよ」
「う、しお、潮、……ほんと!? 呼んでいいの?」
「もちろんだよ。俺ら友達じゃん! 気兼ねなく話そうよ」
「……おお。すごい、潮モテそうだね、この学園で。あ、俺のことは晴太でいいよ」
「その言葉待ってた! 晴太ね! ……ん?」
まて、なんだモテるって。
「てかそろそろ集会行かないと、あと少しで始まっちゃうよ」
「えっそんな時間!?」
「みんな行っちゃったし」
「エエーーーーーーーッ」
「ほら、一緒に行こう。講堂で集会あるから」
二人で急いで教室を出る。
「な、なんでみんな先に行ったんだ……」
「赤澤も何か言ってたみたいだけど、俺らの話の熱が激アツだったみたい」
たはは、と笑って頭をかく細尾くん、もとい晴太。
「この学校は自主性を求めてるというか、自由というか、放し飼いというか……」
「まあお金持ちのご子息がほとんどだからね。ただ、無駄な行事っていうのは全くなくて、こう言った全校集会だってその月の予定を全部生徒に伝えるためにあるんだ。一応年間予定はサイトに出るけど、変更する点も多いから、出席しないと予定はなにもわからない。だからみんな出席するんだ」
「えっじゃあ晴太やばいじゃん。ごめん、俺のせい?」
「いや、大丈夫。俺、足速いから。ほら、潮行こう!」
「えっ? なに足速いって、……エエッ速!!! えっちょっ待てよ!!!」
あとあと聞いた話だが、晴太は50mを5.67秒で走るらしい。
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