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第15話
職員紹介まで聞いて魂が抜けてしまった。
学園長紹介から理事長紹介まで行われ、さらには、点呼こそないが簡易的な入学式も行われていた。生徒代表は赤澤くんだった。
学園長がまさかのテレビでよく見る文科省のキャリアの人だったり、そのほかにもニュースで名前を聞くような著名な文化人が、この学園の講師として在籍しているようだった(その人よりも立場が上な奈津緒って一体なんなんだ)。
少しのブレイクタイムがとられ、ざわざわとし始める講堂。
「すんげ……」
「意外とすごいんだぜ」
「みんなすごい人ばっかだな」
「この学校にはめちゃ金持ちとか、各業界の要人の息子とかいるじゃん? そこと仲良くなれば、政界の要人になるのもあっという間なんよ」
「なるほど。理にかなってるね。で、千石くんは、あれだよね」
「うん。テレビ首都の社長の、千石正昭の息子だよ。長男だけど、姉ちゃん入れたら4番目」
無邪気な笑顔とともに指で4を作って見せてくる。なるほど、末っ子っぽいわ。
「えっと、俺は、タカヤギジュエリーの社長、高柳隆二の息子で、高柳潮です。弟入れても長男……」
「知っとるよー挨拶したじゃん。あの時は弟もいたよね」
「弟……」
そう、以前テレビ首都の朝のワイドショーに生出演した際、社長直々に挨拶に来てくれたのだ。
そのときは彼と、確か3人の姉が一緒に見学に来ていて、めっちゃ熱烈な挨拶をされた。
あれは今より半年弱前だけど、だいぶ印象が変わった気がする。
あのときの千石くんは寡黙で、俺はお姉ちゃんたちとばっかりがずっと喋っていた。その時彼に抱いたのは金持ちのボンボンってイメージだけど、今は圧倒的に話しやすい。
現に俺もなんだかペラペラと話をしてしまってる。
そうあえばあのとき、弟も一緒にーーー、
「はっ」
弟と考えただけで頭が痛くなる。
俺はあと数ヶ月は弟の姿を見られないのだ。
「えっ、ごめん、泣かんで……」
「ごめん。俺まだ弟がいないってことが受け入れられてなくて」
うっ、意識しただけで涙が出てきた。
やべえと思って千石くんを見ると、めちゃくちゃ真面目な顔で俺を見てきた。
「潮くん泣いても心底イケメンやな……」
「えっ?」
「これはうちの生徒会長様と何かあるかもしれん」
「いやなんもないよ」
「いや、気づいてる? 自分のイケメンさに」
「いや、確かに前よりは垢抜けたし、全然見られる顔だと思ってるけど」
「それだけじゃなくてさ、なんかオーラみたいなんがあるんよ。さっきも思ったけど。あの人は今的なやつのテレビに出てみなね。人気爆発してやばいことになるよ。俺は昔からゴシップには鼻が効くからよくわかる」
「いやぁ〜それはないわ」
「俺が言っとるから本当よ」
「まあじゃあ番組やるときは首都テレに呼んでよ」
「そしたらパパに話ししとくわー。……でも気をつけとき。俺は何があっても揺るがん女好きだけど、ここの生徒は違う」
ニコニコが似合う顔が真面目な顔をすると迫力が違って、俺がどこかに行ってしまいそうだ。
「しかも、潮くんは他の人とは違う何かを持っとる。んで、それにみんな惹かれる。間違いなく。それはきっとカリスマ性があるからしかり、恋愛感情ありきしかり。気をつけえ。えらい波乱が巻き起こりそうじゃ」
「う、うん……(ていうか天性の女好きってなに)」
「とか言ってる時点で俺も潮くんに興味めっちゃあるんやけどね。てへ♫」
「うえっ」
「あっひっどい」
「いや、別に好かれるのはいいよ。ただ俺がそれを捌き切れる自信がないし、100%受け入れられる自信がない。ただ、理解はできるかな」
「随分と悟ってるのな」
「みんなそうだよ、男が男を好きだっていうのもさ、個性じゃん。認められるもなにも、存在して当たり前よ。ただ俺はあんまり触れたことがないだけで、それにこれから触れてくってことなんだろうね」
「……」
「やだ自分語りしちゃった、恥ずかし」
唯一の初めましてじゃないからなのかな、なんだかよく話してしまう。
俺をまじまじと見つめる千石くん。その顔も整ってるなあ。
なーんでお金持ちで、その上顔も整ってるのかなあ。不思議だなあ。
とかのんきに思ってたけど、このときの千石くんの勘は、間違いなくエラかったと後で気づかされることになる。
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