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第16話

『生徒会長挨拶』 そうアナウンスがあった瞬間、生徒全員が立ち上がった(もちろん俺は出遅れた)。 「えっ……?」 なんだか、その瞬間がスローモーションに見えた気がした。 ブロンドヘアの、美しい男が登壇する。そして縁台の前に立つと、全員が頭を下げた。 まるで彼が王かのように。 『頭をお上げ。そしてお座り』 頭を上げる。その時はじめて彼の顔をはっきりと確認する。 変な話かもしれないが、日本人の顔ではなかった。 みかさんも外国人のような可愛らしい顔をしていたが、それとは全く違うただの美しい人だった。髪は透けるようなプラチナで、目は緑というか、宝石のようなヘーゼルカラーだった。 イケメンというから、ハリウッドのようなスターを想像するかもしれないが、それとは全く違う、血液から洗練されているような高貴さと美しさをひしひしと感じる。まるでゲルマンの本物の王だ。 そういえばあの人、この金剛学園のパンフレットに載っていた気がする。確か表紙で、裏表紙で、インタビューも載ってて……あれ、モデルじゃなかったんだ。 そんな彼の横には、一つのクラウンがあった。真ん中には青い、まるで海のような、潮目のような深い青色の宝石がはめ込まれている。 宝石屋の息子じゃなくても一目見ただけでわかる。あれだけで軽く億はするだろう。スポットライトの光を全面に浴びてもその輝きだけは色あせることがない。是非一度、間近で見させていただきたい代物だ……! 『生徒諸君、進学おめでとう。そして新入生諸君、入学おめでとう。生徒会長の慶光院吏音(けいこういんりおん)です』 確かこの人の代わりに、みかさんが教室で挨拶したんだっけか。 日本語を話すのが不思議に感じてしまう。 『金剛学園は、今日から創立100周年期間に入る。これは我々も誇るべきことであり、また、歴史を受け継いできた諸先輩方へ改めて感謝を。さらに言ってしまえばこの春の良き日に、金剛学園が新たな年度を迎えられたのは君たちのおかげだ。改めてお礼を言おう』 やっぱり富豪を束ねる生徒会長だけあってか、カリスマ性が違う。 ちらりと周りを見渡すと、生徒のほとんどが恍惚の眼差しで彼を見つめていた。まるで恋する乙女のように。 その様子は異様だ。 『そして僕自身、今年度が生徒会長としての最期の年であり、学園の宝石としての最後の年だ』 ざわつく会場内。そういえば奈津緒も宝石だったとか言ってたよね。 宝石ってなんなんだろうか。 でも確かに奈津緒やこの生徒会長を見ると、宝石と呼ばれるのも納得いく。 きっと、宝石のように美しい人って意味なんだろうな。ただこの生徒会長は別格だけど。 『生徒会長としては高等部一年から、そして宝石としては中等部一年から。どちらも長い数字だ。これらは君たちが支えてくれたからこそ続けられてきたものである。ほんとうにありがとう』 ふっと笑うその姿はまるで一輪のバラだ。どこからかため息が聞こえる気もする。 『どうか共にあと一年、生徒会長である私と、宝石である私、』 ーーー生徒会長と目があった。 正面から見てもその目の美しさは宝石のようだ。 思わず笑みがこぼれる。 『いや、違う』 えっ? 『俺はもう、宝石ではない』 「えっなんて?」

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