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第19話
「残念ながら夢ではないですね」
「やっぱりかーーーーー」
みかさんが引き連れた軍団の、メガネをかけた真面目そうな人が口を開く。
「現にすでにパンフレットやポスター、CMの差し替えの計画が始動しました」
「……俺が出るってことですよね」
俺以外のその場の全員が首を縦に振った。
「……俺、俺! ただのしがないジュエリーショップの息子ですよ!? ちょっと有名になったからって所詮成金だし、その成金な俺をこの学校の、その、代表みたいなのにするなんて」
「うちは成金だとかじゃないとか全く関係なくてな、変な話だが金を払えればみんな平等なんだよ。そのなかでも潮はまさかの編入生だ。編入生ほど羽振りがいい人間はいないからな。ある意味別格でもある」
「しかも潮、君、タカヤギジュエリーが今どんな位置にいるのか知らないのかい?」
「タカヤギジュエリーの位置……?」
「英国御用達になったのはもちろん、世界中の財閥や王族から注文が殺到してるっていうのは?」
「えっ、あっ、知らないです……」
「うちの母もね、大のサファイア愛好家で、君が発掘したサファイアのアクセサリーを手に入れようとしているけど、常に加工待ち状態なんだ。原石自体も出回ってないから、世界中の金持ちが、販売再開を待ちながら君たち会社のサイトと日々にらめっこしてるんだよ」
「そんな、慶光院家の方が……」
「君はそれだけ素晴らしい家の子息なんだ。しかも宝石屋の息子、君が宝石と呼ばれるのは何もおかしくないし、むしろふさわしいくらいだ」
「そうだ潮。何も気後れすることはない。この俺が見込んだ男だ。お前は誰の上にでも立てる……いや、誰をも包み込む、王であるにふさわしい才能を持っている」
ひどく見た目のいい男2人に励まされる男、俺。
女子から見たら超羨ましい状況なんだろうけど、俺からしたら1ミリも理解できない状況だ。
「なんじゃそら……」
「安心してください。僕たち生徒会もしっかり高柳くんをサポートします。このクソアホ会長もぼんやり理事長も、一応仕事はちゃんとできます」
「君、なかなかやるね」
「会長のおかげです」
「とにかく、一度やってみればいいんだよ。何かお前がヘマしても、俺が全力で揉み消す」
「僕も全力で掻き消そう」
「いや、怖いですって!」
「この二人が本気になれば、人を消すなんてことないかもしれないですね」
どうしよう、本気で震えてきた。俺、こんな世界に関わることなんて想像したこともないぞ……。
「どうしよう、俺のせいで、罪の無い命が……」
「まあそんな無駄なことに時間を使うなら、僕は潮を宝石として最大限輝かせることに努力をするけどね」
うっわこの人笑顔で人を消すことをそんなことって言ったぞ……。隙を見せたらやられるやつだこれは……。
「っと、そんなことはいいんだ。もうなっちまったものは仕方がない。これからの予定を確認していかないといけないんだわ」
「そうですね。それについては広報の山下が管理をしていますので」
「はい」
さっきのメガネをかけた真面目そうな人が一歩前に出てくる。
「改めまして、新宝石、就任おめでとうございます。生徒会広報の2年、山下創名(やましたはじめ)です。よろしくお願いします」
「アァ……。高柳潮です、不束者ですがよろしく願いします……」
山下さんと握手をする。
晴太以上になんとなく普通そうに見えるこの人でも、トンだぶっとんだ金持ちなんだろうなと思うと頭が痛くなる。
俺の味方は果たしているのだろうか。
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