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第5章 パーティ! (2)

2  いよいよ今日は、姉妹校との打ち合わせの日だ。  俺は昨日からそわそわして、むしろやる気十分!って感じ。  だって、噂に聞くと、姉妹校の生徒会の皆さんはなかなかにレベルが高いらしい。そりゃあそうだろう、全国屈指のお嬢様高校の中の、選りすぐりのメンバーだ。お近づきになるかどうかはともかく、そんな女の子たちを間近で見られるのが嬉しいよね。 「鼻の下伸ばしてんじゃねえ」 「ぁだ、」  お出迎え、に選ばれたのは会長と俺だ(熱烈に所望したのは内緒)。他のメンバーは、会議室の設置をしている。  正門へ向かって相手いる最中、こつん、と軽く頭を小突かれた。 「テンション上がるのは仕方ないでしょー」 「面倒なだけだぞ、交流なんて」 「うわあやる気ない。会長さあ、」 「なんだ」  去年も経験して、特にいい思いもしなかったんだろう。  あからさまに、今までのどの行事よりも面倒そうに息を吐く会長を見上げ、悪戯に笑ってその耳元に囁いた。背伸びするしかないのが悔しい。 「チャラくて鈍い子、に、出会えるといーね?」  会長の理想のタイプが、生徒会なんかにいないと思うけど。  期待を煽る意味で言ったら会長は目を丸めて、「はあぁ」と、それはもうこれ見よがしに、重くて深い息を吐いた。額をおさえるポーズつきだ。何それ、やな感じ! 「去年はいなかったの」 「あ?」 「会長の理想の女子高生」 「あー……」  会長は空を見上げる。  冬の空は、日が短い。  そんなに遅い時間じゃないのに、青がオレンジ色に浸食され始めている。 「まあ、いずれわかる」 「なにそれどゆこと」 「ほらよ、お嬢様方のお出ましだ」  随分ジラされた上に、教えてもらえなかったという……。  そうこうしている間に既に校門は目の前で、俺ははっとした。  校門の向こうに見える、五つのシルエット。  清楚な紺色のセーラー服に身を纏ったそれらは、紛れもなく、姉妹校の生徒会のお嬢様方だ。  校門の前に辿り着いて対面する。  ――もう、周囲に華が飛んでいるように見えた。  中央には、一番背が低いが、気品の感じる金髪ロングヘアの女の子。え、金髪。人工的ではない、透き通るような自然な色だから、もしかしたらハーフか何かかもしれない。瞳の色も、透けるような茶色だ。瞳はまん丸なのに、意思が強そうにツリ上がっている。  その隣には、金髪ちゃんよりも背が高くて、何より大きな胸につい視線が行きそうになってつい逸らした。肩くらいの黒髪ストレートで、穏やかで優しそうな顔をしている子。でも今は緊張しているみたいで、俺と目が合ったら、その隣にいる背が高い子の後ろに隠れてしまった。  背が高い子は、あーきっと女の子にモテるんだろうなあ、ってタイプの女の子。茶色い短い髪に、しゅっとした輪郭、ハッキリとした顔立ちは宝塚さながらで、俺よりイケメンなんじゃないの、ってレベル。後ろに隠れた子に、何やら囁いている仕草も、王子様みたいだ。  金髪ちゃんを挟んで反対側に、黒髪を一つに結んだポニーテールの細身の子。薙刀か何かの武器を背中に背負ってる。え、こわい。しかもすごく睨まれている、こわい。激しい敵対心を感じる。  そしてその横には、かわいい女の子、ではなく、スーツに身を包んだ若い男の人がいる。顧問か何かかな。  どの子も、清楚な白いセーラー服に身を包んでいる。スカートだって、校則遵守な膝丈だ。紺や黒のタイツが、眩しい。 「どうも、ご足労感謝する」 「昨年ぶりね、各務総一郎」  一歩前に出た会長が、改めて礼をして出迎えると、金髪ちゃんが顎を上げて可愛らしい声で会長を見上げた。フルネーム呼び。 「今年こそ、華麗なエスコートを期待するわ」 「努力はする。……会計の鈴宮だ。鈴宮、向こうの会長の白鳥坂」  とん、と背中を押されて促された。  ぴん、と背筋が伸びる。 「はい! 2年の鈴宮流でーす、よろしくお願いしまっす」  流石に初対面で余計なことは言わない、言えない。  にこ、と笑って見ると、五人分の目線が俺に向かう。約一名、視線がすごく痛い子がいる。こわい。 「全く、気品を疑うな」 「え」 「何故こんなヤツが生徒会なんだ」 「え」 「ちょ、ちょっと、葉月ちゃん」  視線だけじゃなくて、言葉でも攻撃される。  人を刺すような目で、謂われもない(いや、完璧にないわけではないけども)批判を向けられて戸惑っていると、大人しそうな子が間に入ってくれた。 「悪いねー、こいつちょっと思想が偏ってるんだ。気にしないで。自分は副会長の杉野、よろしく」  イケメン女子は中身までイケメンだった。  ぐるる、と唸ってきそうな薙刀女子を制して、爽やかに笑ってくる。 「あ、会計の、間宮です。よろしくお願いします」 「ふん。……柳田。監査だ」  大人しい子がぺこりと頭を下げて、薙刀女子は目を合わすことなくぽそりと自己紹介してくれた。 「あ、顧問です。僕のことはお気になさらず」 「今年赴任された柄本先生よ。交流が気になるというから、連れてきたの。いいわよね?」 「勿論、問題ない」  会長は頷く。顧問がしっかり仕事してるなんて、流石女子校だ。うちの学校も顧問はいるけど、先生にしかできない仕事を頼むことしかしてない。基本、放任主義だ。 「会議室まで案内します。どうぞ」  会長はあくまでもいつものペースだ。  俺はかわいこちゃんズに心躍る、ってより、個性豊かな女子高生たちに圧倒されまくりだ。  今まで遊んだ子たちと、タイプが全く違う。

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