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第5章 パーティ! (12)

12  一日目となる今日は、開会式の後、一年生が中心となって、代わる代わるに踊る日だ。開会式では、会長が皆の前に立って堂々と開会宣言をしていた。かっこいい。  この日のために作られたとまで言われる講堂は、立派なダンス・ホールになっている。プロの生演奏でダンスミュージックがかかり、それに合わせて、体育で学んだ社交ダンスの技術を活かし、それぞれが踊る踊る。  女子高生は該当の学年が主に来ているけれど、うちの生徒は出入り自由だ。例年、ギャラリー席には女子高生を一目見ようとたくさんの生徒で溢れ返っている。今年は、それ以外が目当ての人もいそうだけど。  俺たち生徒会役員は、本部席ってことで、ダンスホールの近くに机と椅子が用意され、そこで様子を見る事が出来た。勿論、女子高の役員ちゃんたちも一緒だ。 「やっぱり平良くんかっこいいね」 「目立ってるね」 「タイラーやるねー」  一際背が高い平良くんの存在感は、一年の中でも大きい。代わる代わる、相手役となる女の子は平良くんを見上げてぽっと頬を染めている。それに困ったように笑うのも、また堪らないんだろう。 「あ、北野くん」 「キレッキレだね」 「流石運動部だね」  野球と関係あるのかわからないけど、女の子と殆ど身長が変わらないはずなのに、北野くんの動きははっきりと大きくて、人の目を引いた。楽しそうに踊るから、相手役の女の子も自然と笑顔になっている。なるほど、これはこれで、絶対モテる。流石北野くん、侮れないぞ。 「アレってアリ?」 「いいんじゃないかい?」 「流石だね日向」  剣菱くんは、……いつの間にか、女の子役になっている。  本人も随分戸惑っているようだけれど、相手の男は嬉しそうだ。  女の子たちも気にしてなさそうだし、いい、のかな?  「俺の剣菱と踊るなど許さんぞあいつは何組の誰だ呪い殺す」なんて、学年の壁を越えられない副会長が血の涙を流しているのは見ない振りをしよう……。  休憩を挟んで、もう二曲踊る頃には、体力は随分消耗している。しかし、たくさんの出会いを産むためには、たくさん踊らないといけないのだ。うん、みんな頑張ってるなあ。今日は基本的に見守るだけの俺は、気楽なものだ。  最後の曲が終わり、フィナーレとなる。決めポーズをして終わった後は、多くの拍手が講堂中に鳴り響いた。  ――そして、実は、この後が本番だったりする。  最終日のフリー・タイムにも踊ってくれませんか、と、そう声を掛けるチャンスが、この時間だ。ここで約束を交わせたら、女子高生はもう一度この講堂に来られるし、そうじゃなければ、もう二度と会えない、そんなシビアな時間。  去年は遊べそうな子を見繕って、そのまま別な方に誘い出したのは、いい思い出。 「最終日、踊ってもえませんか」 「わたしと」 「いいえ、私と!」 「あっ、わたしも~」 「え、ええと、あの、」  おお、早速、人だかりが出来ている。  ぐいぐい女の子に押されて滅茶苦茶困っているのは、ご想像の通り、長身イケメンの平良くんだ。  やっぱり、一番目立ってたもんなあ。  校庭に迷い込んじゃった犬みたいに、眉を垂らして視線をうろうろさせている様子は、こういっちゃ何だけど、かわいい。  時期を見て助け船を出そうかな、なんて思っていたら、颯爽と登場する一つの影。 「こいつ、俺と踊るから」  小さなその影は、群がる女の子たちに向けて、衝撃的な一言を投げたのだった。 「えっ」  平良くんも衝撃を受けている。 「な」 「え」 「な!?」 「う、うん……?」  半ば脅迫に近い勢いの、「な!?」に、ついに平良くんが根負けした。頷く様子に、小さいの、あ、北野くんだけど、北野くんが満足そうに口角を持ち上げる。 「つーわけで、こいつ、売約済みだから」 「え~!」 「きゃ~! 何今のカッコイイ!」 「いいもの見ちゃった!」  女の子たちから、あらゆる意味の歓声が上がる。  不満げな声より、嬉しそうな声の方が多いのは……いいこと、かな?  ――ていうか、平良くんの、カノジョ、ってもしかして。  「せめて連絡先を」「そういうのは事務所を通してから」「ガードかたあい」なんて、女の子と平良くんを遮るようにしてやり取りをしている北野くんを見て、ある可能性が頭を過ぎる。  ……ま、まさかね!!!  ちなみに、剣菱くんは、女の子ってよりも男に囲まれてた。「最終日は是非ドレスを着てくれ」「そして俺と踊ってくれ」なんて言われては、現れた副会長の無言のオーラに負けた男たちが散り散りになる、なんて光景が行われていた。副会長、強し。

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