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放課後、いつもように友達と遊んで日が暮れる。家に帰ろうとしたのは、帰宅ラッシュを過ぎた時間。さっさと帰って夕飯が食べたいと思ったところで、俺は今朝母さんに今日発売される雑誌を買ってきてと言われたことを思い出す。そんなわけで、ちょっと面倒だと思いつつも駅の近くの本屋に入っていった。
俺は昨日もこの本屋に来ていたから、自分自身の欲しい本はなかった。足早に雑誌のコーナーに向かっていって目的の雑誌をとると、すぐにレジに向かう。しかし、あるものが視界に入ってきて、俺の足は止まる。
「……芹澤」
芹澤だ。昨日と同じように芹澤がいたのだ。
なんで? と思った。なんで連日本屋なんて来ているんだ、と。例えば昨日買った本が面白くてまた続きを買いに来た、ならわかる。けれど芹澤は、特に欲しい本があるという風には見えない。ぼんやりと本の背表紙を眺めたりしているだけだ。
「……なんか本探してんの」
「……うわっ」
気になって気になって、思わず声をかけてしまった。芹澤は俺が近づいてくるまで気配に気づいていなかったらしく、俺に声をかけられた瞬間に飛び退くようにして俺と距離をとる。本当にぼーっとしていたみたいだ。
「……べっ、……べつに」
「じゃあ何してんの? 昨日もここ来てただろ」
「は? なんで知ってんだよ、ストーカー? キモッ」
「ああ!?」
芹澤はじとっと俺を睨むと、俺から逃げようとする。でも俺はうっかり芹澤の手を掴んで引き止めてしまった。芹澤はぎょっとしたような顔で俺を見ていたが、俺自身芹澤の手を掴んでしまったことにびっくりしているからそんな顔をされても困る。
「あっ……えーと……ま、待てよ」
「……なんで」
「いいから」
ここで芹澤を引き止める必要なんて、全くない。芹澤が本屋で何をしているのかなんて全然俺には関係ないし、芹澤と無駄に関わりたくないし。それでも俺はなぜか芹澤の手を掴んで、「待て」とまで言ってしまった。
芹澤のことを引きずるようにしてレジに向かって、とりあえず手に持っていた雑誌を買う。芹澤はその間ずっとぶすっとした顔をしていたけれど、店内ということもあってあまり抵抗はしてこない。俺は会計を終えると、そんなおとなしい芹澤を連れて本屋から出て行った。
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