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「――あら、お友達?」  家に帰ればいつものように母さんが出迎えてくれた。俺は高校生になってから、家が学校と離れていたこともあってあまり家に友達を連れてきていない。そんなわけで母さんは芹澤をみて驚いたような顔をしていた。 「えっと……はじめまして。芹澤と申します」 「はじめまして。いらっしゃい、ゆっくりしていってね」 「……はい」  芹澤は芹澤で、俺の家に入るなりそわそわとしていて落ち着かない。いつもの堂々とした態度はどこへいったのか、母さんと目を合わせることもできないようで俯いたり目を逸らしたりとしていた。 「何か食べてきた?」 「いや……特に何も食ってない」 「そう、じゃあ用意するから先にお風呂でもはいっていて。芹澤くんの服は……結生が貸してあげてね」 「へーい」  台所の方から、醤油の匂いがする。煮物かなにかだろうか。芹澤もその匂いに反応しているのか、興味深々といった様子で台所の方へ視線を向けている。借りてきた猫ってこういうことを言うのかなって、いつもよりも小さくなっている芹澤をみて思っていた。

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