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 情けない。でも同時によくあそこで芹澤のことを襲わなかったと自分を褒めたい。ほんとうにさっきの芹澤はエロかった。背中を触っただけではあるけれど、素肌に触れられると芹澤はああなるのか。もしもっと関係が進んだら……と考えるとにやにやとしてしまう。  でも、そんな妄想に耽ってなんていられない。部屋に芹澤をほったらかしにしてしまっている。俺は急いでトイレで抜いて、部屋に戻った。 「……っ、」  部屋の扉をあけて、俺はまた抜いたばかりのものが勃ってしまいそうになる。    芹澤が俺が転がした状態のまま、ぼんやりとベッドに横たわっていたのだ。服を乱して、はあはあと浅く息をして、肌を赤くして。俺が部屋にはいってきたのに気付くと、ちらりと目だけで俺を見つめてくる。 「……とうどう」 「……う、」  色っぽすぎて、逆に神秘的というか。普段は俺様な芹澤はこうしてほんの少し乱れているだけでも、強烈なインパクトがある。一旦間をおいてから再びみると、もう近付けない。 「え、えーっと……」  とても、ベッドに行きづらい。こんな芹澤と一緒の布団にはいったら、また俺は何かをしてしまうような気がする。だからと言って「やっぱり別々に寝よう」なんて言ったら、芹澤はまた悲しそうな顔をするかもしれない。  俺はぐっと唾を呑みこんで、ゆっくりと芹澤の寝転がるベッドに近付いていった。そして素数を数えながら芹澤の横に座り、布団を引っ張りながら横になる。芹澤を抱き寄せてベッドの中央に持ってきて、しっかりと布団のなかに入れてやった。 「せ、芹澤……あの、さ……」 「ん……」 「い、今更だけど……なんで今日俺の家にきたの?」  電気を消して、部屋を暗くする。ぼんやりとした部屋の中では、相変わらず芹澤の瞳がきらきらとしていて綺麗だった。飴玉みたいな目だなあ、なんて思う。 「いっ……いや、春原の家にいけなくなったのはわかるんだけど……そ、その……俺の家に来たいって、思ってくれてたり……」 「……!」  ドキドキとする心を紛らわすように、疑問に思っていたことを聞いてみる。今までは遅くなっても自分の家に帰っていたから、春原の家にいけなくなったとしても芹澤としてはそのまま自分の家に帰ればよかったはずだ。でも、俺の家に来てくれたってことは……期待してもいいのかな、なんて思う。  聞いてみれば芹澤は、かあっと顔を赤くした。そしてうつむいて、ぽすぽすと俺の胸を叩いてくる。照れているのだろうか。とても可愛い。 「へへ……いつでも来ていいよ」 「……」  仕草のひとつひとつに、きゅんきゅんする。頭をぽんぽんとしてやれば、芹澤は俺を叩くのをやめてぴたっとくっついてきた。そして、こく、と頷く。 「……」 「あっ、えっと……ね、寝るか!」  もそ、と顔をあげて俺を見上げてきた芹澤が視界に入った瞬間、俺は焦った。危ない、衝動的にキスをするところだった。頬を染めてほんのりうるうるとした目で見上げられたりしたら、キスをしたくなるのは当然だ。  芹澤とキスがしたい。絶対に幸せだろうな。一回したいと考えるともうしたくてしたくてたまらなくなって。でも、するわけにもいかないから俺はぎゅっと芹澤を抱きしめて目を閉じた。  芹澤も、俺の背にそっと手を回してくる。ぎゅーんと胸が締め付けられて……なかなか寝付けなかったけれど。芹澤の体を抱きしめていると気持ちよくて、やがて、眠気がやってきた。

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