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第六章 星の雨よりも綺麗だった。

 ここのところ、学校に行くのも苦ではない。そりゃあ朝はだらだらと寝ていたいけれど、登校も芹澤と一緒だから楽しい。一緒に自転車で田舎道をかけて、ほぼ満員電車に乗って、そして学校に行く。今日もそうして学校に着いて、1日がんばるかとやる気がでてきた。 「芹澤ー。来週の週末何してんの?」 「えっ……なんで?」 「えー、なんていうか……芹澤と行きたいところが」 「俺と?」  教室に向かう階段を昇りながら、芹澤に予定を聞いてみる。来週の週末は、流星群をみることができるらしい。流星群が観測できるのは深夜3時くらいらしいけれど、次の日が休みな週末ならみることもできそうだ。せっかくだから芹澤とみてみたいな、と思って誘ってみた。  そうすれば芹澤は、じっと俺を見つめてほんのりと顔を赤らめる。そしてまたふいっと目をそらすと、ぼそぼそと呟いた。 「……それって……その、つまり……で、……デー……」 「でっ……! デートっていうか、ほら、あれ、……うん!」  いわれてみれば。週末にわざわざ会って何処かへ行くのは、天体観測でもデートというかもしれない。そう考えると急に恥ずかしくなってきた。  そして芹澤の口からデートという言葉が出てきたことに感動してしまう。俺と会うことをデートって言葉で表現するなんて、って。 「えっ……と……い、いいけど……藤堂と、その……で、デートしても……ひ、暇潰しに!」 「え、ま、まじかー! やったー!」 「わっ、ちょっと……!」  天体観測をデートと呼ぶかどうかは置いておいて、芹澤が俺とデートすることをオッケーしてくれた。俺はもう、嬉しすぎて芹澤にぎゅっと抱きつく。芹澤は恥ずかしそうにぱたぱたともがいていて、それがまた愛らしくて余計に腕に力がこもってしまう。  そうやって、階段の踊り場でちょっと戯れていたときだ。上から誰かがおりてくる。邪魔になるかな、と思って少し端に避けながら相手の顔をみると…… 「――ずいぶんと仲がいいんだね」  そこには、にっこりと笑った春原の顔があった。 「あ……おはよう、春原」 「おはよう、藤堂くんと……涙」  春原はゆっくりと階段を降りてきて俺たちの横に立つ。芹澤は……小さく震えて、俺の腕を掴んでいた。芹澤の様子がおかしいと思っていれば、春原は爽やかな声で言い放つ。 「涙……昨日、俺の手を振り払ってどこに行ったのかと思ったら藤堂くんの家に行ってたんだね」 「えっ?」 ――手を振り払った? 芹澤は春原の家にいけなくなったから俺の家に来たんじゃなかったっけ。  春原の言葉に疑問を覚えていれば、春原はそのまま去って行ってしまった。恐る恐る芹澤の顔を見てみれば――パッと見てわかるくらいに、青ざめている。  芹澤は俺と目が合うと、びくっと肩を震わせた。そして、ぼそぼそと聞き取りづらい小さな声で話し出す。 「……き、昨日……その……」 「うん」 「……ゆうの家に行く途中に……手を、繋がれて……こ、怖くなって逃げてきた……」 「……ありゃ」  なるほど、と俺は納得する。芹澤は触れられることへの恐怖自体を克服したわけではなくて、単に俺に触られることには慣れただけだ。違う人に手を繋がれたりしたら、やっぱり怖いのかもしれない。  でも、意外だった。芹澤の春原への態度をみれば、芹澤は春原なら平気だとばかり思っていたからだ。安心すると同時に、妙なひっかかりを覚えてしまう。でも、あんまり二人の関係を突っ込んで聞いていくというのも気が進まなくて、結局俺のなかにはもやもやがたまっていくばかり。 「ま、いーんじゃね。とりあえず春原には軽く謝っておけば」 「……うん」  春原も、なんだか危うい雰囲気のあるやつだ。あんまり芹澤に不安を与えないでほしいのだけれど。

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