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「えーっと……流星群って何時から?」 「三時かな」 「そっ……そっか」  シャワーを浴びて、俺の部屋で流星群まで待機。芹澤は、ベッドの上で俺の隣に座りながらそわそわとしていた。三時まで自分はどんなことをされてしまうんだろうって考えている顔だ。 「よいしょっ」 「ひあっ!?」  あんまりにもいじらしいものだから、俺は思わずのしかかるようにして芹澤を押し倒した。とは言ってもここで手を出すつもりはない。最近は芹澤のことが愛しくて愛しくて、以前よりもずっと手が出せなくなっている。前ならここからがぶっと唇に噛み付くくらいならいけそうだったけれど、「待て」って理性が俺に言い聞かせる。大切にしてあげたいんだ。本当は臆病で弱い芹澤のことを、大切にしたい。ただ泣かれたらぷつんと理解が切れてしまうかもしれないから、泣かれたら困るけれど。 「ちょっ、ちょちょ、……ちょっと待って……」 「ん?」 「いやっ……だから、……そういうこと俺したことないから……心の準備が、」  あ、大丈夫だよまだしないって、抱きついただけだから、……って言おうとしたけれど芹澤の反応が可愛くて少し様子を見ようと黙ってみる。 「えっ、えっと……だめ、……だめ、なんだけど……」 「……」 「その……えっと、……やっぱり……」 「……」 「……今日で、最後だし、」 (最後じゃないよ) 「……あの……」 「!?」  今日で最後って思っているらしい芹澤は……俺が黙っていると次第に拒絶の言葉を吐かなくなってくる。しどろもどろになっていって最後には顔をかあーっと赤らめて……なんと、自分の服をほんの少しではあるけれどめくりあげたのだ。 「うっ……」  口で素直に言えないからってまさかこんな行動にでるとは。予想外かつ破壊力のありすぎる行動に、俺の頭の中はサイレンをあげはじめる。がんばれ俺の理性、付き合ってもない相手とヤるなんて不健全なことを芹澤相手にやるな、って。本当に好きなら我慢しろ!って。崖っぷちの俺の理性が悲鳴をあげていて、眩暈すら起きるほど。 「藤堂……」 「……っ、」  芹澤は震える手で、自らの服の裾を掴んでいる。肌は全然露出されていなくて、おへそが見えるくらい。それでも芹澤は恥ずかしいのか緊張しているのか素肌に触れられるのはまだ怖いのか、ぷるぷると全身を赤くしながら震えている。  ここまでさせておいて何もしないのが逆に可哀想な気もしてきてしまう。どうしよう、どうしよう……悩んで悩んで、俺はさらされた芹澤のお腹を手のひらでするりと撫でてみた。 「あっ……!」  ぴくんっ、と芹澤の腰が跳ねる。続けてくるくると円を描くように撫でてみると、「あっ、あっ、」と声をあげながら芹澤は脚をもじもじとし始めた。  ……エロい。正直、ものすごくエロい。露出しているところなんて腹だけなのに、凄まじいエロさだ。芹澤には大きい俺の服はだぼだぼとしていて、そのせいで袖がゆったりしている。袖に半分くらい隠れた手で自分の口を塞いで声の我慢を始めた芹澤は、ぎゅっと目を閉じて苦しそうだ。俺が手を動かすたびにはふはふと息が漏れて顔が赤くなって、可愛らしい。 「腰ほっせぇ……」 「んっ……」  両手で芹澤のくびれを掴んでみると、自分の手が大きく見えた。なんだかすごくいやらしい。エッチをしたらこの腰がくねくねと動くのかと考えると、下腹部が熱くなってくる。  ……結構辛い。気を抜いたら芹澤のことを食べてしまいそうだ。触れば触るほどに敏感に反応して可愛い声をあげる芹澤を、こっちのペースで触っていたらどんどん激しいことをしてしまいたくなる。 「……芹澤。大丈夫?」 「……ん、?」 「直に触られるの、怖くない?」 「んー……」 「大丈夫なら……もうちょっとだけエッチなことするからな。無理だったら俺の頭押しのけな」  ゆっくりだ。ゆっくり触るだけの、ちょっとエッチなことをしよう。ちゃんとしたエッチをするのは想いが繋がってから、でも芹澤が今触られたがっているから、こうして加減しながら触れていく。 「ひゃっ……」  俺は芹澤のお腹に顔を埋めた。その瞬間、びくりと芹澤の身体が硬直する。お腹がヒクンヒクンと小さく痙攣していて緊張状態。ただの腹のくせになんでこんなにエロいんだって、不思議になってくる。 「は、ぁ……」  芹澤のお腹は、暖かくて柔らかい。筋肉はそれなりにあるんだろうけれど、ふかふかすべすべしていて気持ちいい。  俺がそうやって芹澤のお腹を堪能していれば、芹澤がふるふると震えながら俺の頭に手を添えた。押しのけられるか……!?とひやひやしたけれどそうじゃないらしい。髪の毛を少しいじってきたから、この状態でいていいよってことだろう。 「あったかい」 「んん……」 「可愛いお腹だな。ほんと」 「んひゃっ……!? あっ……」  芹澤が拒絶してこない。大丈夫、の意思を感じ取った俺は、唇からちろりと舌をだして芹澤のお腹を舐めた。そして、ビクンッと芹澤の腰が跳ねると、にゅるっと芹澤のおへそに舌をねじ込んでやる。 「あっ……あ、っ……あ……」  浮いた芹澤の腰を掴んで、舌でぐりぐりとおへそを刺激した。舌先がおへそをこすりあげるたびに芹澤は「あぁっ……」と甘い声をあげるものだから、燃えてきてしまう。手のひらで芹澤のお尻をぐいっと揉み上げるようにしながらひたすらにおへそを舐めてやると、芹澤の息はどんどんあがっていく。 「はぁっ……はぁっ……とうどう……だっ……だめっ……」 「……無理そう?」 「むりっ……んっ……じんじんする、……あっ……」  じんじん? あれっと思って俺は芹澤の顔を見上げる。悩ましげに瞼を伏せて、薄く開いた口から吐息が溢れている。乱れた髪の毛が額にぱらぱらと張り付いていて色っぽい。  これ……もしかして感じているのか、おへそを舐められただけで?って思ったけれどそういえば芹澤は耳元で囁いただけでもとろとろになるくらいに敏感だ。このままおへそを舐め続ければ、芹澤はイっちゃうかもしれない。いいんだけど……芹澤のことをイかせてみたいんだけど、芹澤を初めてイかせるのは付き合ってちゃんとエッチしたときがいいなあ、なんて変なこだわりが俺のなかで生まれてくる。 「……よし、一旦休憩な、芹澤」 「えっ……う、うん……」  それに、芹澤には優しく接しなければいけない。いきなりの愛撫で、キスもまともにしていないのにイかせていまうのは、あんまりよくないかなって思った。  俺は体を起こして芹澤の隣に転がる。はふはふと顔を赤くしながら息をしている芹澤の顔を覗きこんでみれば、芹澤がぽやんとした目で見つめ返してくる。 「い、まの……なに」 「今のがたぶんイクってことじゃない」 「イクっ……て……お腹の奥のほうが熱くなるのは、イクッてこと?」 「うん。イキそうになったんだよ、芹澤」  さっきの「じんじん」はイクときの反応だよって教えてやれば、芹澤がかあっと顔を赤らめた。そして、俺が舐めていたお腹をすりすりと自らの手で触り始める。イクとのここが熱くなるんだなんて考えているのだろうか。そりゃあ普通は男はチンコでいくんだから、お腹のなかのほうが熱くなるなんてびっくりするだろう。戸惑いながら、そしてイきそうになった事実に恥じらいながら芹澤はお腹を撫でていた。 「……こんなふうになるなんて……知らなかった」 「あとでもっとすごいことするから、こんなもんじゃすまなくなるよ」 「……もっとすごいこと、って」  芹澤の吐息が艶かしい。期待しているようなその瞳にくらくらする。 「全身にちゅーしたり、芹澤のお尻のなかいじったり」 「お、お尻……!?」 「そうだよ、今、芹澤がじんじんしたところを内側からいじくるんだよ。指とか俺のチンコでいっぱい掻き回すの」 「~~ッ、」  俺とエッチはしたいみたいだけれど、やっぱり芹澤はそういうことに抵抗はあるらしい。恥ずかしそうにぷるぷると震えて、俺の胸をぽすぽすと叩いてくる。 「と、藤堂のエッチ……!」 「抱くんだからエッチなことはするだろ」 「そっ……そうだけど……」 「させてくれるんだよね?」 「……ッ」  芹澤はもすっと俺の胸元に顔を埋めてしまった。そして、俺の背に手を回して、ぎゅっと抱き着いてくる。 「……すれば、いいじゃん。いっぱい、か、かきまわして、……いっぱいエッチなこと、すれば!」 「……無理しなくていいけど?」 「とっ……藤堂ならいいんだよ!」  ……かわいいなあ。ツンツンしてるけれど、俺のことめっちゃ好きじゃん。  前は憎たらしかった芹澤の可愛くない口が、愛おしく感じる。じゃあお言葉に甘えて、いっぱいエッチなことしようかな。でもまずは芹澤に俺の想いをわかってもらわなくちゃいけないんだけれども。

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