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流星群も終わってしまって、俺たちはせっかくだからと望遠鏡で夜空を眺めていた。
「あ、すごい……望遠鏡でみるとこう見えるんだ」
「望遠鏡はじめて使った?」
「う……んっ!?」
でも、俺たちはキスばっかりしていた。少し話をしてはキスをして、また少し話をしてはキスをして。ずっともどかしい想いをしてきてようやくキスをすることが許された俺は、もう芹澤と少しでも触れ合っていたくて仕方なかったのだ。
「じゃ、邪魔するなってば!」
「空なんていつでも見れるじゃん」
「きっ、……き、キスだっていつでもできるから!」
「俺は今キスしたいの」
「俺は今望遠鏡を覗きたっ……んーっ!」
すっかり泣き止んだ芹澤は、いつもの調子でつんつんと俺を突っぱねる。でも、キスをすれば全身の力が抜けてとろんとしてしまって、それ以上は抵抗してこない。それが可愛くて、俺は何回もキスをしてしまう。
「も、もう……ばか、とうどう……」
何度目かになるキスをすると、芹澤はくたりと力を抜いて俺に寄りかかってくる。顔が真っ赤で、可愛い。
「ね……もうちょっと、ここ、いたい」
「ん? いいよ」
「……藤堂と、夜明けの空がみたい」
まだ明けぬ夜空をみて、芹澤がつぶやく。
夜明けの空か。俺もちゃんと見たことはないな、とこころよく頷いた。そうすれば芹澤はちらっと俺を見つめて……キスをしてくる。
「藤堂……」
芹澤にとっての夜明けはいつくるんだろう。そう思いながら俺は、芹澤の縋り付くようなキスに応えていた。夜明けの時間までまだまだあるから、それまで。たくさんキスをしようって思った。
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