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 結生の、第一印象は、俺にとっては最悪だった。というのも、彼が、俺に何かをしたというわけではなく、彼が、俺の嫌いな容姿をしていたからだ。顔が云々というわけでは、ない。その、チャラチャラとした格好が、とにかく嫌だった。  ……昔、俺を、いじめてきた人たちに、似ていた。 『インバイの子』 『一発いくらですか~?』  結生をみていると、反吐の出るような、幼稚な言葉たちを、思い出してしまった。だから、俺は、結生のことは、とにかく嫌っていた。  でも、結生は、俺の思っていた性格とは、全く違っていた。    ある日を境に、結生は俺を、襲うようになった。もちろん、嫌いな不良共に似た容姿の彼に、そんなことをされるのは、嫌だった。嫌だった、けれど。不意にみせる、優しげな眼差しに、俺は惹かれるようになってしまった。無理やり、襲ってくるくせに。その目は、優しい。今まで俺が向けられたことのない、優しい眼差しだった。その目をみると、どきどきするようになった。そして、乱暴に襲うだけのサルだとばかり思っていた彼は、変なところで純粋だった。気付けば俺は、結生に触られると感じるようになっていたし、結生のことが好きになっていた。  それはもう、異常なくらいに、俺は結生が好きになっていた。結生は、俺を、たくさん、愛してくれている。でも、俺は、たぶん、それを遥かに超えるくらいに、結生が好きだ。結生に知られたら、怖がられるんじゃないか、というくらいに。 「涙」 「あっ……ゆ、結生……どこ、触って、」 「気にしなくていいよー、ちょっと触りたいなーって思っただけだから」 「気に、するから……! んっ……あ、ぁっ……」  名前を呼ばれれば、頭のなかは、嬉しさで満たされる。身体に触れられれば、全身が歓びで、溢れかえる。こうして、寝起きの身体をまさぐられることに、たまらない幸福を、感じる。  昨日、指を挿れられた、秘部に、結生はまた指を挿れてきた。ものすごく、嬉しかった。結生の身体の一部が、自分の体内にあるという事実に、ゾクゾクとして、痛いくらいに胸が跳ねて、それだけでイきそうになる。 「痛くない?」 「いたく、ない……」 「じゃあ、ちょっと触らせてね」 「ん、ひゃ、……、く、ぅ……んっ、」  くちゅくちゅという音が、布団の中に響いた。下腹部がじんじんして、下半身から力が抜けて、……気持ちいい。 「また、声我慢してる」 「んっ……んー……」 「声出していいんだぞ、ほら。大丈夫、他の部屋には聞こえないから」  もう、本当に、感じていた。腰がビクンビクンと跳ねて、自分の身体じゃないみたいだ。かき回されているところが、熱い。溶けてしまいそう。  でも、俺は、声を我慢した。結生の胸元にしがみついて、片方の手で口元を抑えた。いやらしいことをされて、悦ぶと、変態って思われるんじゃないかって思ったからだ。そして、嫌われるんじゃないかって。元々俺は、「インバイの子」と蔑まれて生きてきたから、こういったことには人一倍抵抗があった。だから、こうして身体を触られて悦んでしまうことを、恥じた。結生に触られることへの歓びと、卑しい反応をしてしまう自分の身体への嫌悪。恋人になったらこういうことをするもんだ、と結生は言うけれど、それにしてもこんなに感じているとバレたら、引かれてしまうと、思う。男で、学校では真面目なのに、こんなことが好きってバレたら…… 「ふっ、……んんっ、うー、……ひゃうっ……」 「ナカでイくと何回もイケるって、マジなんだなー」 「へっ……い、イッて、な……ぁんっ……」 「ぎゅって締まって、それからぎゅーってキツく俺の指に吸い付いてくる、これイッた反応でしょ。ほら」 「ぁあんっ……やっ、……んぅっ」  ああ、バレる。もう、何回もイってるってバレて、結生に、引かれる。これ以上触られたら、もっとイっちゃう。でも、抵抗できない。結生に触られて、結生の胸元でうずくまりながらイくのが、幸せだと思ったから。もっと、触って欲しいって、思ったから。 「な、涙。涙は、前立腺いじられるのと、奥いじられるの、どっち好き?」 「へ……?」 「指、ちょっとしか挿れてないなあーって思ってさ。ちょっと、奥の方、挿れてみるね」 「まっ……ちょ、……ふ、ぁあぁ……」  ぐぐっ、と、結生が指を奥に押し込んできた。その途端、奥の方がじゅわっと熱くなって、ため息のような声が溢れてしまう。腰が砕けそうだ。奥に挿れられたのが……こんなに嬉しいなんて。もっと深く、結生と繋がれたんだ、って。そのことが本当に嬉しくて……奥を触られると、こんなにも感じてしまう。 「すごい反応。もしかして、奥、好き?」 「あ、ひぁ……だ、めぇ……はぅっ……いくっ……あっ……ふぁ、あ……」  だめ、だ。奥の方が好き、なんて、そんなはしたないことバレたくない。それなのに、どんどん声が出てきてしまう。結生が指を動かすたびに、イってしまう。 「大丈夫? こんなにイって、辛くない?」 「んぁ……あんっ……はぅ、う……」 「あ、涙。なに、もっとして欲しい?」 「あぅっ……ひ、ぁあ、あ……」  だめだだめだ、そうわかっているのに、腰が揺れる。もっと、って乞うように、結生に縋り付く。奥の方を触られて、たまらなく気持ちよくて幸せで。もっと、もっと、さわって欲しいって。たくさん奥でイかせて欲しいって。そう思ってしまう。  ぐっちゅぐっちゅと、卑猥な音が布団の中で、響く。俺のいやらしい声も、一緒に。  すき。奥のほう、すき。結生に、触って欲しい。結生が、すき。すき。好き、結生、好き。 「あ、あっ……あぁあっ……、!」  結生への恋情が、胸をいっぱいにみたして。満タンになって溢れた、そのとき。一際大きな絶頂が、やってくる。こんなのは、初めてで。パニックになって、また俺は泣いてしまった。 「あ、ごめん、涙……大丈夫?」 「ば、か……うう、ばかー……」 「ごめんって」  結生は自分がやりすぎたって、そう思ったのか、謝ってくる。でも、違う。俺が、結生を好きすぎて、感じすぎてしまうのが、わるい。  積極的になんて、なれないから。はしたない子って思われるのも嫌だ、それに、「好き」とも言えないのに、セックスだけしたい、なんて、そんな勝手なこと言えない。だから、結生は、俺はあまりセックスをしたくない、と思っていると、思う。  したい。他の人とは死んでもしたくないけれど、結生となら、したい。優しい瞳に見つめられながら、抱かれて、天国にいきたい。 「ゆき」 「ん、……」  言葉では、言えません。だから、せめて、キスで。俺の気持ちを、感じてください。

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