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「や、やめっ……いま、吐いた、から」 「だから? 俺、涙の汚いところも全部、受け止めるつもりだよ?」 「ゆ、ゆう、……だ、め……」 「力抜いて。怯えないで。全部忘れて。俺だけを見て」  待って。俺には、結生が、いる。でも、でも。結生は、きっと、俺を、嫌う。あんなに、酷い態度を、とってしまったのだから。  ゆうは……ゆうは、俺を、嫌わない。俺を…… 「ゆう……」  唇を、重ねられた。俺は、抵抗、しなかった。 「んっ、……ん、……ん、」  ゆうのキスは、結生のものとは、違かった。ものすごく、それはもう、すごく、優しいものだった。結生は、俺を求めてくれているんだな、って、そんなキスだったけれど、ゆうのは、違う。優しくて、蕩けそうな、キスだった。だから、違和感はあった。でも、このまま、優しくされて、たとえみんなに嫌われたとしても、優しくされて。そんな、ゆうがずっと、俺のそばにいてくれるって未来を、みせてくれるような、そんなキスだったから。気持ちよかった。 「……このまま、気持ち良くしてあげる」 「んっ……ま、って……それ、は……」 「怖い? したことあるんだよね、藤堂と」 「……なんで、知ってるの」 「顔見ればわかるよ」  ゆうが、俺のカーディガンのボタンを外しながら、問いかけてくる。結生と、した、なんて。言えなかった。俺なんかと、そんなことをしたって、誰かに知られたら。結生が、可哀想だ。こんな、薄汚いにんげんと、関係を持っているなんて知られたら、結生に、迷惑がかかる。  でも、ゆうは、誤魔化せなそう。ゆうに、嘘なんて、つけない。ゆうは、誰よりも、聡いから。 「一回したなら、セックスをすること自体は怖くないよね。それとも、俺とするのが怖い?」 「ち、ちが……だって、俺……結生と、」 「藤堂は涙のこと嫌ってるんでしょ? 早いうちに俺を選びなよ。涙のほうから藤堂を振ってやりな。涙が酷いことを言われて、傷つく前に」 「振っ……!? や、やだ、そんなの、」 「涙に傷付いて欲しくないから、言ってるの。でも、いいよ。涙ができないっていうなら無理強いはしない。ただ……涙に、自分には居場所があるって知ってほしい。ここにあるから。涙の居場所は、ここにあるって、……それを俺は知ってほしい。藤堂に嫌われても、涙にはちゃんと居場所があるよ」  結生に、嫌われているかもしれない、でも、俺は、結生とつきあっている。そんな今、ゆうとするのは、ダメだって、思った。  けれど。  どうせ、嫌われる。どうせ、また一人になる。一人になるのが、怖い、怖い、怖い。怖いから、一人じゃないって、感じたい。  ごめんなさい、たすけて、たすけて、ごめんなさい……。 「あっ、……」 「楽にして」 「ん、ん……」  するり、と指を絡められて、シーツに縫い付けられた。そして、シャツのボタンも外されて、首筋に、キスをされる。ちくり、と痛みを感じて、なんだろうと思えば、ゆうが、にこりと笑っていた。 「藤堂、気付くかな」 「なにが?」 「んー? いや?」  なにか、されたのかな。わからなかった、けれど、特にそれからは、痛みを感じなかったから、気にしなかった。  体を、優しく、撫でられる。胸をさわさわと触られて、そして乳首の先っぽを、指の腹でくるくると撫でられて、ぞくぞくと、した。気持ちいいのかといえば、そうじゃない。身体は、たぶん、感じているけれど、心が、ついていかない。でも、嫌というわけでは、なかった。これで、一人じゃなくなるのから、嬉しいと、思ったから。 「あっ、……ん、ん……」 「感じてる涙、可愛いんだね。もっと早く知っていればよかった」 「んっ、……ぅ、や……」 「これから、たくさん見せてね」  お腹の下のほうが、じんじんする。脚が、もじもじとしてしまって、シーツが擦れる音が、耳障り。  あんまり、声を出しては、だめ。勝手に、溢れてしまうけれど、唇をきゅっと結んで、耐えようと頑張った。もしも、人がきたら、大変だから。こんなところで、いやらしいことをしているところ、見られたら…… 「!」  ゆうの手が、俺のベルトに伸びたとき。ガラッと、扉の開いた音が聞こえた。 「……ここに、いるかな。涙」 「……!?」  そして、まもなく聞こえた声は……結生の、ものだった。ドクン、と、心臓が激しく、高鳴る。  探しに、きて、くれたの、かな。待って、だって、結生、あんなに、ひどいこと、言ったのに、嫌って、ないの? なんで? 待って、俺、 「……あは、来ちゃったか、藤堂」 「ゆ、ゆう……」 「ここに呼んできてあげるよ。だから、藤堂が入ってきたら言ってやりな。別れようって」 「えっ、ま、まって、ゆう、」

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