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「あれ? 会長? どうしたんですか、顔色が良くないですよ」  とんでもないものを見てしまって、気が動転しながらも生徒会室にいけば、先客があった。正直、気を落ち着けたかったから、人がいないことを期待したけれど、仕方ない。  生徒会室にいたのは、逢見谷と同じく一年の(みやこ)さん。顔立ちは可愛らしく、でも真面目そうな格好をした感じの良い女の子。彼女は俺を見るなり、心配そうな顔をして声をかけてくる。 「そういえば会長、昨日早く帰りましたもんね。体調悪いんですか?」 「あ、……それは大丈夫。それより……」 「それより?」 「えっと……ゆう……春原と逢見谷って何かあるの?」 「……ああー……あの二人……」  二人が付き合っているとかなら、公言はしていないかもしれない。俺だって、結生とのことはゆうに知られたくらいで、自分からは誰にも言っていないし。でも、女の子ならそういったことに鋭いから、何か気付いていないかな、と思って聞いてみた。そうすれば、都さんは何かを思い出すように上の方を向いて、ぽつぽつと話し出す。 「あれですよ、逢見谷って前から春原先輩にすっごく憧れていて、もうずっと後ろをついてまわってたんです。でも、春原先輩はなあなあに振る舞うだけで、そんなに逢見谷に構ったりはしなくて。まあ……春原先輩って浅く広くなところもありますから、そんなもんかなーとは思ってたんですけど……」 「けど?」 「最近になって急に距離が縮まったっていうか。一緒に帰ることも多くなったんですよ」 「最近って……?」 「うーん……二、三週間前くらい?」  二、三週間前……そういえば、俺が結生との距離が近くなったのもそのくらい。それは関係ないような気がするけれど、ゆうの態度が変わってきたのも、その頃のような気がする。手を掴んできたり、俺に話しかけてくる頻度が高くなったり。 「なんかもう逢見谷、すごいですよー。いつもよりテンション高いけれど常に上の空みたいな。春原先輩に構ってもらえてよっぽど嬉しいんじゃないですか」 「ふーん……」  なんだか、周りの環境がどんどん変わり始めていて、心が忙しない。あんまり変化があると、少し疲れてしまう。  ちょっとこれから不安だな、なんて。そう思った。

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