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「涙、今日はうちにこないの?」 「うん。服とってこないと」 「服なんていくらでも貸すのに」 「サイズが……」 「ぶかぶか可愛いだろー!」  今日は、わりと穏やかに学校を過ごせたと思う。結生が俺を気遣って、たくさん話しかけてくれたから、というのもあるし、落ち着いて見てみればクラスの人は思った以上にいい人たちばかりだったから。  ゆうと逢見谷のこととか、ひっかかることはあるのだけれど。  でも、そんなに悪くない一日だったけれど、今日は結生の家にいけない。それだけが、すごく残念だ。また久々に俺の家に帰ることになって、不安だらけ。 「結生……あの、」 「ん?」  まだ別れたくないな、そう思う。俺はキョロキョロと辺りを見渡して、人がいないことを確認する。そして、背伸びして、ちゅっ、と結生にキスをした。 「ま、また明日ね」 「……! うん、また明日」  外でキスするの、ちょっと恥ずかしい。でも、結生が頬を染めてにっこりと笑ってくれたから、嬉しい。  照れ臭さもあって、俺はパッと結生に背を向けて歩きだす。結生とキスをした嬉しさで足はふわふわと軽いけれど、家に近づくたびに、重くなっていった。

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