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「……あれ、」
眼が覚めると、俺は、知らないところにいた。保健室のベッドのように、カーテンに囲われたベッドの上で、寝ていた。ここは、どこだろう……見渡すと、ベッドの柵に「◯◯病院」と書かれたシールが貼ってある。……ここは、病院らしい。
「あら、起きたの?」
そのとき、カーテンがひらいて看護師がなかに入ってくる。看護師は俺のシャツのボタンを外してさっと脇に体温計を差し込みながら、柔らかく微笑んだ。
「階段から落ちちゃったみたいよ。お母さんが救急車呼んでくれたの」
「……その、救急車呼んだ人、は?」
「お仕事があるんだって。涙くん、今日だけはここに入院よ。足骨折しちゃってるから」
「……」
あの人は……一体。俺は看護師の話を上の空で聞きながら、あの人のことを考えていた。
俺の父親にあたる男に孕ませられて逃げられて、借金まで背負わされて。そして借金を返済しようと働くのはいいものの、なんで風俗なんて選んだのか。そんな仕事を選んだからああいった男たちに目をつけられたんじゃないのか。そもそも子を持つ母親が体をなんて売るなよ……おかげで俺は、インバイの子なんて呼ばれて、いじめられたんだ。人生が狂ったんだ。
色々と、不満は湧いてくる。でも、すべて俺のためにしたことだとだと思うと……恨みきれない。
「……わけわかんない」
あの人は、また金を稼ぐために体を売りにいったのだろう。だから、再び会うのはいつになることか。
何もかもが、めんどくさい。
考えるのに、疲れて。俺は、目を閉じた。
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