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「――あんまり、無理、すんなよ」
「……ううん」
涙がこの部屋で寝るときは布団を押入れからだして寝ているらしい。母親と寝る時間が被らないから問題はないのかもしれないけれど、この部屋で母親も涙も生活しているということが想像つかない。このアパートはたぶん、一人暮らし用に部屋がつくられている。
そしてそんな、涙の家族の生活の跡が思いっきり残っている、この部屋で。俺たちは、セックスをする。涙は「この部屋でしたい」のだと言う。自分にとっての醜いもの、全てを俺に見せてくれるのだという。
「……あんまり、気遣わなくても、いいよ」
「でも……涙、あんまりガツガツするタイプじゃなかったし……」
「……ごめんね、……こういうこと、俺、苦手な振りしていたから。結生に、淫乱って思われるの、いやだったから」
部屋が色々と事情がありそうなこと、それは俺はそこまで驚かなかった。涙から母親の話を少し聞いていたから、それを踏まえてみればおかしなことではないような気がしたからだ。俺が今日、涙の家に来て一番驚いたのが、この状況。涙が――自ら服を脱いで、俺の上に乗ってきたことだ。
「……こういうこと自体は、嫌い。でも……結生と、……え、エッチ、するのは、俺、大好き」
顔を真っ赤にして、しっとりとした声で、涙が囁く。
あまりの色気に俺はびっくりしてしまって、動けなかった。いつも、恥ずかしがって声もあんまりださなくて、積極的にセックスをしてこようとしなかった涙が、こんなことを言うなんて。たくさんの葛藤とか、苦しみとか、今の涙は抱えているとわかっていながら……俺は、この状況に興奮してしまっていた。それくらいに、今の涙は色っぽかった。
涙がこめかみに垂れる髪の毛を、耳にかける。そして、ゆっくりと、顔を近づけてきた。
「……すき、……結生」
「好き」というのは、やっぱりまだ簡単にはいかないらしい。辛そうに、吐き気をこらえるようにしながら、涙は俺に愛を囁く。それでも、苦しいのに涙は何度も何度も、「好き」と囁いては、なみだを流して幸せそうに俺を見つめてくる。
「結生に触られるのが、嬉しくて。結生とひとつになれるのが、嬉しくて。ほんとうは、大好き。結生とエッチするの、大好き」
「……、あんまり、煽るな、って」
「結生……して。いっぱい、俺のこと、触って……なかを、掻き回して」
苦しそうに喘ぎながら、涙が俺に口付けてきた。ぴたりと体が密着すれば、涙の心臓の鼓動を感じ取ることができる。すさまじいほどにそれは高鳴っていて、壊れてしまわないだろうかと、心配してしまうほど。この鼓動の高鳴りは、俺とセックスすることへの嬉しさもあるだろうけれど、なによりも「好き」と素直に伝えることへの恐怖が強いのだと思う。ここで最後までセックスができれば、少しは涙のなかの恐怖も薄れるかもしれない。「好き」と伝え合いながら体をひとつにできる喜びを、体と心で、覚えて欲しい。
「ん、……ん……」
重ねた唇、涙の唇を割って俺は舌を挿れてゆく。そして同時に、涙の秘部を、ゆっくりと弄る。気持よくなってほしい、そう思いながら優しく優しくキスを深めていけば、涙の腰がゆらゆらと揺れる。鼻にかかるような甘い声を漏らしながら、涙は「もっと」とねだってきたのだ。
「あ、……ん、う……んん、……」
正直、かなり、エロい。涙が自ら腰を揺らせば、細い腰が艶めかしくくねって俺の目を惹きつける。
俺の理性に、少しずつヒビがはいっていった。いつもの淑やかな可愛らしい反応をされると罪悪感もあってなかなかガッつくことはできないけれど、こんなふうにねだられたりしたら。「エッチが好き」と涙は言っているけれど、どこまでやっていいのかの線引きがはっきりとしていない。涙はセックスに慣れてはいないからガツガツやったらダメだって、そう思うけれど。でも、でも。
「涙、っ……」
「は、ァッ……!」
涙のあそこが、びしょびしょになっている。ローションがないからどうしようとか思っていたけれど、これなら傷つけないでできそう。そう思った俺は、思わず、思いっきり涙のなかに指を突っ込んでしまった。もう、我慢が、苦しい。涙の熱いところを触って、涙をよがらせたい。
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