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「――ねえ、結生」  セックスが終わったのは、完全に日が沈んだ頃。このあたりは街頭もあまりないのか、部屋の電気をつけないでいると真っ暗だ。俺たちは布団のなかで抱き合って、夜の闇に溶けるようにしてセックスの余韻に浸かっていた。心地よい火照りに、身をまかせていた。 「……ごめんなさい。いっぱい、傷つけたよね」 「……ううん。涙だって大変だったんだろ。わかっているよ、大丈夫」 「でも……」  たくさんたくさん抱いたから、涙は疲れてしまっていると思う。気だるそうに顔をとろんとさせていて、体もぐったりとしていた。そんな疲れ気味の涙がかえって色っぽくて、どきりとする。 「ごめんって言えるんだから、涙はちょっと強くなったんだよ。よかったじゃん。自分のことでいっぱいいっぱいだった状態から、ちょっとだけ前に進んだわけだからさ」 「……ゆき、」 「それに、俺――涙に好きって言ってもらえてすっげえ嬉しい。本当に嬉しい。ほんと、感動してるの、俺」  涙は、ちょっとだけ、変わった。俺に謝ってくれたことはもちろん、「好き」って言ってくれた。俺に「好き」って気持ちをがんばってぶつけてくれるようになってきた。だから、こんなに色っぽいし、いつもよりも可愛い。 「……これから、いっぱい結生に、「好き」って……言うね。俺も、「好き」って言えて、嬉しい」 「うん……涙。大好き」  涙がぽろりとなみだを一滴流して、俺に抱きついてきた。本当に愛おしい。  それからぽそぽそと話して、俺達はゆっくりと眠りについた。今までで一番、「繋がった」感じがした。

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