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「うわ、山田菌だ、最悪!」
うちのクラスには、「山田くん」という男の子がいた。病気らしく、少し変わった言動の男の子。小学校のときから彼は有名で、中学校に入学するこの時期、みんな同じクラスになるのを嫌がった。ちなみに俺は、彼と同じクラスになった。
「まじ最悪なんだけどー、山田菌と俺同じ班だよー……」
「え、俺なんて芹澤と一緒なんだけど! ウケる!」
「芹澤は別にいいだろー、暗いだけだし。山田菌はやべーよ、まじきたねーもん」
「まあ俺も芹澤と一緒になったところでどうでもいいけど山田菌は無理だわ」
春先に、フィールドワークがあった。初めての中学校、初めてのクラス。3分の1くらいは初めましての生徒、残りは小学校のときからの顔なじみ。班決めは先生が適当にわりふったのだが、俺の友人たちはその結果に大層不満らしい。
「変わった子」は二人いた。芹澤涙と、「山田くん」。芹澤涙は「頭がおかしい」らしいけれど、見た目は小奇麗だからイジメの対象にはなっても疎まれるということはない。対して「山田くん」は、あまりはっきり言ってはいけないだろうけれど所謂不潔行為と呼ばれる行為をたびたび行うため、かなり疎まれていた。「山田くん」と同じ班になった北野はそれはそれはショックを受けたように顔を青くしている。
「なあ春原ー、班変わってよー」
「ええ? いや、俺はいいけど先生がだめっていうでしょ」
「え、おまえはいいの!? 聖人かよ春原!」
でも、俺は別に「山田くん」に苦手意識は持っていなかった。もちろん芹澤涙にも。
だって、仕方のないことだ。病気を抱えている人を、そんなふうに貶すなんて、それこそみっともない。むしろ支えてあげることが同じクラスである俺たちの役割だと思う。
「いやー、つかやっぱ俺、芹澤と一緒ってのキツいわ。あいついるだけで班が暗くなりそう」
「武井が話しかけてあげればいいんじゃない?」
「なんの話題で!? あいつだぜ!?」
「適当に、好きな音楽はー? とかさ、そういうことでいいじゃん。芹澤くんは別に悪い子じゃないと思うよ」
「ええー……むり~」
俺も、なにか彼らにしてあげられたらいいんだけど。そういうことを考えると、これは上から目線なのだろうかなんて考えてしまってなかなか行動にだせない。感謝されたいとか、周囲に讃えられたいとか、そういったことは一切思っていないけれど。色々と思い悩んでしまって、行動に出せないから――そんな自分がまだまだ子どもなのかなあ、なんて思う。
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