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 雨が傘を叩く。裁判所の入り口で項垂れる親を尻目に、俺はぼんやりと空をみあげていた。  兄さんの裁判の結果は――心神喪失により「無罪」及び「措置入院」。精神に異常が認められ、罰を下されず精神病院に強制入院されるというもの。入院期間は未定。厳しい拘束のもとの治療となるため、言い換えれば終身刑のようなものであるが……遺族としては納得できないだろう。兄さんのせいで葉は亡くなって、それなのに兄さんには「罰」が下されない。兄さんの精神に異常があるからという理由で、葉は死んだのだ。  ……そんなことが、許されるのだろうか。葉が何をしたというのだろう。葉の未来を奪った兄さんがなぜ罰を受けないでいられるというのか。精神に異常があった、そんなこと……理由になるのか。 「……」  目の前で葉が死んだ。ヒトが肉へと変化した。  雨粒が俺の頬を濡らす。雨がアスファルトを叩く音が、脳髄へ入り込む。  罪を犯すくせに法に守られる、彼ら。ゆるせない。ゆるせない、ゆるせない。  すべて、消えてしまえばいいのに。頭がおかしいやつなんて、すべて。

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