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「春原~、おまえさ、めっちゃ性格悪くね? むしろ俺らよりヤバくね?」  中学二年になると、涙とはクラスが離れた。クラス替えがきっかけというわけではないけれど、俺は前ほど涙と一緒にいることはなくなった。涙の方から近づいてくることがなくなったのだ。 「おまえ、一年のときすっげえ芹澤と仲よかったじゃん。味方してたじゃん。それなのに今は裏で芹澤のこと馬鹿にしてさ、普通にいじめてた俺らより性格悪いよ」 「なに? こんどはおまえらが涙の味方でもする?」 「まっさか! なんで芹澤の味方とかする必要あんだよ。あいついじめてっと楽しいんだもん。山田菌みたいなキチより芹澤の方がいじめがいあって楽しいわ」 「あはは、精々がんばって。俺は涙を慰める係」 「おまえも直接やれよな」 「それじゃ意味がないんだって」  涙は言う。「ゆうには、友達がたくさんいるもんね」と。あんなにずっと一緒にいたのに、俺の友達にはなりきれていなかったのだと、涙は思っている。涙が近づいてこないのは、俺が涙を嫌っていることもあったし、その自分自身への卑下もあったのだ。「自分なんかがゆうの一番にはなれない」「自分の存在がゆうの友達と一緒にいる時間を邪魔しているんじゃないか」、俺が他の友人と一緒にいる時間が増えてゆくたびに、涙のなかでそんな想いが膨らんでいったのだろう。俺を見つめる涙の目は、俺に強く焦がれていて、それでいて寂しそうだった。 「あいつのなかで、俺は親友じゃなくちゃいけないの」  廊下ですれ違うたび、切なげに瞳を震わせる涙。独りの肩が、いつもに増して細く見える。  ざまあみろ、おまえには孤独がお似合いだよ。  ……なんで俺は、おまえを抱きしめたいの?

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