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『――生徒代表、一年二組・芹澤 涙』  高校は、俺は涙と同じ高校に進学した。涙の側にいてそのまま殺してしまおうという想いもあったけれど、単純に偏差値的に丁度よかったから。俺や涙みたいな外部からの受験となるとそこそこ難易度の高くなる高校ではあったけれど、涙は自分をいじめてきた中学の馬鹿共と同じ高校になりたくないがために死に物狂いで勉強してこの高校に入ったらしい。その結果なんとトップの成績での入学、特待生となり学費免除。あいつ、意外とヤル奴だ。  ただ、入学式のときの涙は案の定。生徒代表となって挨拶をしていたけれど、ガチガチだった。たぶん、他の人から見たらわからないと思うけど、俺から見たら一目瞭然。人前に立つことに慣れていない涙は、凄まじく緊張していたんだと思う。そんな様子で挨拶をしているのは、なんだか微笑ましかった。 「入学おめでと、涙」 「……ゆう」  その日の放課後、俺は涙に会いに行った。俺に群がってくる「メアド教えて」の嵐を掻き分けて涙のクラスまで行ってみる。丁度教室から出てくるところだった涙の周りには、クラスメートと思われる女子生徒が何人かいた。 「えっ、芹澤くんの友達!? 何組!? メアド交換しよ!?」 「めっちゃイケメン~! 類は友を呼ぶんだね~!」  きゃーきゃーと騒ぐ女子生徒の真ん中で、涙がこまったような顔をして俺を見ている。  ……涙は、よくよく考えてみれば好かれる要素が多い。顔も可愛いし、勉強もどうやらかなりできるようだし。昔からの知り合いから離れて「インバイの子」というつまらないレッテルを貼られることがなくなった涙は、もしかしたらものすごくモテるのかもしれない。 「……俺、ゆうと帰るから……」 「え~! 一緒に帰ろうよ!」 「やだよ」 「辛辣! ウケる! また明日ね~! 芹澤くん!」  ……ただ、いじめられてきたせいで、相当性格がひねくれているらしい。吐き出す言葉はかなり冷たい。その顔がなければ一瞬で嫌われるぞ、と俺は心の中で突っ込んでおいて、俺は涙の手をひいた。

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