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 一人の夜は、不安に胸が押しつぶされそうになる。  なぜ、ゆうは俺のことが嫌いなはずなのに、一緒にいてくれたんだろう。なぜ、ゆうは俺をみると切なそうな顔をしていたのだろう。  考えれば考えるほど、謎は深まっていって、見つからない答えは迷宮のように入り組んでいて、はまればはまるほどに、苦しくなってゆく。  不安でいっぱいのときは、最近は結生が一緒にいてくれたから、やり過ごすことができていた。でも、今から結生に会いにいくのも結生に迷惑をかけてしまうと思う。それに、いつまでもべったり結生に頼りっぱなしな自分も、あまり好きじゃなかった。 「……?」  目を閉じて、夢の中へ逃げてしまった方がいい。ゆうに会うことだって、こんな夜にはできないだろうから。  そう思った俺をたたき起こしたのは、スマートフォンのバイブレーター。誰かから電話がかかってきたようで、ぶーぶーといつまでも鳴り続ける。  結生、だろうか。そう思ったけれど……違った。光る画面に写しだされたのは、なんと逢見谷の名前。電話のかかってくる心当たりがなかったから、びっくりしてしまったけれど、とりあえず電話をとってみる。 「……はい」 『芹澤先輩!? 今どこにいますか!?』 「……え? 自分のうちだけど……」 『春原先輩、一緒にいませんか!?』 「えっ……いや、一人……ゆうになにかあったの?』  聞こえてきたのは、息を切らした慌てた様子の、逢見谷。切羽詰まった彼の様子に、ただならない事態がおきたのだと、気付く。 『いなくなっちゃったんです……春原先輩が、どこにもいないんです!』

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