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「俺のこと、怖くないの? 涙」 「……怖くないってははっきり言えないけれど、信じているよ」 「……」  ゆうのことをこのまま一人で家にかえすことができるか、といえばそれはとんでもないことだ。自殺しかけた人を一人にするなんて、できるわけがない。だからといってゆうの家まで送っていくのもなかなかい大変だ。  結局、ゆうには俺の家に一晩泊まってもらうことにした。  もちろん俺も全く警戒しないほどに馬鹿じゃないけれど、なによりゆうのことを信じたかった。 「……君にこれを言ったら、傷つくかもしれないけれど……君ならわかるよね。俺、突然危険な行動を起こす可能性もあるから……」 「……そのときは、そのとき」  下を向いて、小さな声でぼそぼそとしゃべってーー俺の知らないゆうが、そこにいる。俺だって酷い目にあわされたのに、という思いも強かったけれど、それ以上に今のゆうの痛々しさに俺は胸を痛めた。  今、ゆうは苦しんでいるんだ。  それを、俺はどうするの? 「……大丈夫だよ、ゆう」  辛くて辛くて、死にたくなっていた頃。手を引いてくれたのは、紛れもなく、ゆう。中学生のころ、ゆうと出逢っていなければ、俺はここにいたのかすらもわからない。  俺は、そんなゆうに……手を、差し伸べたい。  ……けれど。  そんな強さは、俺のなかにはなくて。ゆうの手を掴む勇気がなくて。  隣を歩いて、ゆうを見守ることが、今の俺の精一杯だった。

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