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「え?」  放課後になって、結生は真っ先に俺のところに来てくれた。そして、「生徒会は何時に終わりそう?」と聞いてくる。けれど、俺は答えた。「今日は一人で帰るね」と。  当然のように、結生は驚いたような顔をした。もともと、一緒に結生の家に行く約束をしていたから。何で急に心変わりしたんだろう、そう思っているのだろう。約束を破る形になったから「ごめんね」とは言ったけれど、それでも結生は納得がいかないといった表情をしている。 「何かあった? 悩みあるのか?」 「ううん。違うんだ。今日は、家に帰らないとって思って」 「……家に?」  俺の言葉を聞いた結生は、きょとんと目を瞬かせた。そして、考えたように唸ったあと、「うん」と言うと俺の頭をぽんぽんと撫でてくる。 「何かあったら電話しろよ。わかった?」 「……うん。ありがと」  ……最近、結生はこうして俺の背中を押してくれる。きっとすごく心配しているだろうなっていうのがわかるから、それが嬉しい。俺のこと、信じているんだなって。  俺は結生に手を振って、生徒会室に向かった。正直、結生の家に行って結生に甘えたい気持ちもあったけれど、きっと今日そうしたら、ずっとそのままでいそうな気がした。踏み出すなら、今日しかない、そう思った。

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