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「……まだ、星がでてる」  アラームが鳴って目を覚ませば、まだ、空が真っ暗だった。こんな時間に起きるなんてことがほとんどないから、その空の暗さに少しびっくりしてしまった。  布団を出て、乱れたシャツの襟元を直す。見下ろせば、布団に半分顔を埋めて眠そうにしている結生。もさもさと枕に散る金髪を撫でると、結生が「んー」とくぐもった声を発した。 「……起きれる? 俺、大丈夫だよ」 「……いく」 「ほんと? 眠そう」 「一緒にいくって、約束、した」  結生ががばっと起きあがって、布団を放り投げる。でも、まだ、瞼は半分下がっている。本当に眠いのに、がんばって俺のために起きてくれることが、うれしい。  ハンガーにかけた制服を手に取る。そして、ゆっくりと身につける。一枚一枚、制服が身を覆っていく度に、決意が、満ちてゆく。 「涙」 「ん?」  俺がシャツを着終わったとき、結生が俺を呼んだ。俺の手にあったネクタイをするっと奪うと、それをそのまま俺の襟元に巻き付けてゆく。 「ネクタイ、つけてあげる」 「……ありがと」  まるで、制服を着るという行為が、俺の決意を固めていくような行為だった。やわらかく、ばらばらとした決意を、包み紙で包んでゆく。結生が結んでくれたネクタイが、それを仕上げてくれる、そんな感じ。きゅ、とネクタイをしめられて、もう、きっとーー俺の決意は、逃げない。  身支度を整えて、俺たちは部屋を出た。朝とは言ってもまだまだ真っ暗な空。そんな空が広がる外へ行くのは、まるで闇の中へ足をつっこむようで怖かったけれど、ゆっくり、進んでいく。  玄関の扉に、手をかける。そして、振り返る。俺が今まで過ごしてきた、汚くて狭い、寂しい部屋がそこには広がっている。  俺は、言う。 「……いってきます」  そして、扉を、あける。

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