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俺が登校してからしばらくして、涙も教室にはいってきた。今朝はいつもよりも冷えたからだろうか、俺が初めて見る、涙のマフラー姿だ。白地に寒色のチェックのはいったマフラーで、涙によく似合っている。
「涙~おはよう。」
「おはよ」
「あのさ~」
涙が席につくなり、俺は涙のもとへ寄っていく。春原と話をして、益々涙の進路について知りたくなってしまったからだ。
「三年のクラス、どこいくの?」
まどろっこしい言葉はいらない。直球で聞いてみれば、涙はぎょっとしたように口を噤んだ。「進路どうするの?」は曖昧に避けられる質問ではあるけれど、「クラスどうするの?」はもう決めていないといけないことだから、逃げられない。今日という今日は教えてもらうからな、と俺が涙に迫れば、涙は少し困ったような顔をして、答える。
「こ、国立文系クラス、……かな」
「……進学すんだ!?」
「わ、わからないけど……もし進学することになったとして、俺は国立以外は無理だし……お金的に。だから、とりあえず国立に対応できる勉強しておかないと」
「ほへ~」
……涙は俺と別のクラスになるらしい。もしかしたら同じクラスかななんて希望を抱いていたが(エスカレーターで進学する生徒と就職する生徒のクラスは一緒になる)、それは夢に終わってしまう。
「ちなみに進学するとしたら、どこの大学いくんだ? 東京? 地方?」
「……え~……、う~ん、……わかんない」
「ええ~。東京にしよ。涙なら受かるよ」
「あはは、そうかな」
クラスが別になることにがっかりしたところだが、それよりもやはり俺は、進路の話から逃げようとする涙が気になって仕方ない。なんでそこまで露骨に避けるんだって。
マフラーをとって一限の準備をする涙を、なんとなくじっと眺める。なぜか避けたがる進路の話をしてしまったからだろうか、涙は俺の視線から逃げるようにしてもくもくと教科書の準備をしていた。
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