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「横山ぁ~、どうしよう、最近、なんか涙と気まずい」 「え~?」  最近の涙の態度はあんまりだ、と思う。いや、デートしたりエッチしたりしているときは相変わらず可愛いし、俺にちゃんと好きって言ってくれるけれど……進路という大事なことを俺に言おうとしないのはどうなんだ、って思ってしまう。きっとこんな風に涙との関係に悩みを抱いているのは俺だけであって、一方的に「気まずい」って感じているだけだから、変に涙に問いただすこともできない。そこは聞くべきなのかもしれないけれど、涙の繊細さを考えると、それに踏み切るのは難しい。  ……というのもあって、俺は横山に相談してみた。横山はスマートフォンをいじりながら、俺に目もくれず、「へ~」とか「そりゃ大変だな~」とか、気のない相槌をうちやがる。 「横山! きいてんのか、おまえ!」 「やべえ! みてこれ! 北海道ってこんなに雪降ってんのな!」 「人の話きけ……うわ、すげえやべえ!」  俺の話をバッサリ中断して、横山がスマートフォンの画面を見せてくる。そこに映るのは、玄関よりも高く積もった雪の壁。俺の家の地域でもみられない豪雪に、俺も素直に驚いてしまう。 「彼女がさ~、家しばらく出れなくて今日学校休むんだってさ~。いいな~俺も休みてえ~」 「……彼女?」 「北海道の彼女」 「北海道の彼女!? 聞いてないんだけど!」 「そうだっけ? あれ? 言ったのは芹澤にだったけか」  どうやら横山が見せてきた雪の壁画像は、彼女が送ってきたものらしい。あら羨ましいこと。完全に俺の話が流されてしまう流れだが、なんだかもうどうでもよくなって、話は横山の北海道の彼女の話題に変わっていく。なんで悩み相談をして惚気が返ってくるんだよって突っ込みたかったが、なんだかもう面倒になってきた。 「そうそう、芹澤、俺の彼女の話題にめっちゃ食いついてきていたな」 「そうなんだ。女の子、気になんのかな」 「いや? 「遠距離恋愛ってどんな感じなの」ってすごい聞いてきたけど。なに? おまえら、遠恋すんの?」 「……し、しない……気がする?」 「なぜ疑問形?」 「……確信がない」  涙が遠距離恋愛に興味を示した?  ……まさか、なんて俺は考える。いや、話の流れでなんとなく興味を持っただけ……とも考えられるが。けれど、最近の涙の態度を顧みると……。  ひとつの答えが頭の中に浮かび上がる。……これはやっぱり、本人に聞いてみるべきだ。

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