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卒業式は、どちらかというと苦手かもしれない。そのあたりは俺も他の男子と似ているのだろうか、じっと人の話を聞くだけの式はただ疲れるだけだった。
ただ、じっとしているだけだから、色々と考え事もしてしまう。入学式のときに、初めて結生を見て怖い人だと思い込んだこととか。中学の頃と違ってみんなが優しくて戸惑ったこととか。いつのまにか結生のことを好きになっていて、恋人になったこととか。精神的に追い詰められて、大切な人たちを傷つけてしまったこととか。ゆうと仲直りしたこととか――……。短い時間で思い返すには多すぎる思い出が、つぎつぎと湧き上がってくる。この高校にはいれてよかった、心から、そう思った。
卒業生代表のスピーチは、生徒会長だった俺がした。送辞をした後輩がボロボロと泣いていたから、どうしても淡々と読み上げることしかできない俺はちょっと申し訳なく思う。
『――学園の益々の発展をお祈りし、答辞と致します。卒業生代表・芹澤 涙』
でも。ふと、見上げた先に見つけた、俺の、母さん。涙に濡れた瞳で、嬉しそうに微笑んで、拍手をしている母さんを見つけてしまって――最後の最後に、俺は泣いてしまった。
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