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「次、結生くんと会えるのはいつかしらね」 「う~ん。長い休みで会えたらいいんだけど。何せ東京と沖縄だと遠いからお金かかるんだよね」 「寂しくないの?」 「うーん……」  空港まで来て、母さんは名残惜しそうに後ろを振り返っていた。振り返ったところであるのは空港の駐車場なんだけれど、とは突っ込まない。  寂しくないの? という質問に、俺はどう答えればいいのか迷う。寂しいといえば寂しい。電話はいつでもできるにしても、触れ合うことはできなくなるわけだし。結生に優しくしてもらうことが、俺は大好きだったし。けれど――この地を発つということには、全く未練がなかった。  あの空を飛び、海へ行く――それこそが、俺が結生にもらった勇気だったから。こうして母さんと二人で生きようと決断できたのは、結生のおかげ。だから、その勇気をもってこの場所を離れるということが、言ってしまえば清々しいような気持ちになる。  あの弱かった俺は、俺の心の中で眠っている。もう俺は、一人でも歩けるし、前を向くことができる。こうして空を仰ぎ――俺は自分自身の変化を、改めて実感する。 「――……、」 「……涙?」  ――空が、青い。  ああ、色がわかる。抜けるように青い空が、広がっている。  今まで、白黒だった世界に――色が戻ってきた。ようやく俺は、自分が作り出した檻から、抜け出すことができたらしい。精神を患い、壊れてしまったはずの色彩が、戻ってきた。  ――俺が生きていた世界は、こんなにも美しかった。この世に生まれてきたことに、心から感謝をしたくなる。 「どうしたの、涙。やっぱり、寂しいのね」  視界が歪み、光がなみだに乱反射する。それを見た母さんが、俺を抱きしめてきた。    ありがとう、結生――俺を愛してくれて、ありがとう。  ありがとう、ゆう――俺と友達になってくれて、ありがとう。  ありがとう、みんな――俺のことを見守ってくれて、ありがとう。  ありがとう、 「母さん――俺のことを生んでくれて、ありがとう」  ああ、なんて空は青いのだろう。

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