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やがて鬼となる母と魄と名付けられた息子との徒然なる日々――【冬の月】

◇ ◇ ◇ ◇ 「ほら、こうすると……雪だるまは上手く作れるんですよ……さあ、魄……あなたも、とっておきの雪だるまを作ってご覧なさい?」 「……は、はい……」 あれから防寒具に身を包むと、降り止む気配などないくらいにどんどんと積もっていく中庭へと私達四人は足を運び、今は雪にまみれて白一色に染まってしまっている桜の木の側で雪だるまを作るべく熱心にかき集めていた。 「じ、じゃあ……誰が一番大きいのを作れるか……競争しましょ……う……」 「…………」 と、私は魄が言いかけていた言葉を飲み込み 急に口を閉ざしてしまった事な気付く。そして、嘘をつくのが下手なこの子は――無意識のうちに何処かへと目線をさ迷わせる。 魄が目線を向けたそこには、王宮の廊下を歩いている守子の父親を持つ何人かの息子達が 歩いているのだ。ちょうど、魄と同じ年頃なのか――無邪気に笑いながら歩いている。会話に夢中になっているせいなのか、運よく此方の様子には気付いていないようだ。 ――しかし、魄は違う。 魄は――無意識のうちに目線をさ迷わせ、しかも小刻みに体を震わせて怯えている。別に、王宮の廊下を歩いている守子の息子達が今この瞬間、魄を責めている訳でも――ましてや、暴力を振るっている訳ではないというのに――。 「……魄、魄――私と二人きりで此方で少しお話しませんか?大丈夫、この間のように魄を怒ったりはしませんから……」 「……は、はい……母上……」 ぎゅっ……と優しく魄の手を握ったにも関わらず、やはり魄の手は冬の寒い日だというのに、じわりと汗ばみ――何かから怯えているように小刻みに震えているのだった。 そんな私と魄が――二人きりで少し離れた場所(王宮の廊下が見えない場所)へと移動しようとする様子に対して、木偶の童子と翻儒は何も言わず心配そうに見守ってくれる視線を背後に感じながら――ぎゅっ、ぎゅっと雪を踏み締めて魄の手を固く握り締めながら真っ直ぐと歩いて行くのだった。

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