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王と王妃と白い鬼の息子との徒然なる日々――【春の月】
「いくら腐れ縁であるお主らの頼み事とはいえ、これ以上面倒事を増やされるのは堪らぬ――故に、」
『えー……世純様、どうして、どうしてー?』
『世純様はお優しい方なのに、どうしてそのような意地悪を言うの?』
世純が頭を抱えながら、魄の頼み事を断ろうと口を開いている最中――遠慮などまるでなく、はっきりとした童子達の問いかけの言葉が世純の話を遮る。そのせいで、彼は一瞬だけ口をつぐんでその後に言わんとしていた断りの言葉を飲み込む。
すると、今まで我の後ろに隠れてもじもじとじと身を捩らせていた尹儒が、未だに面倒臭そうな表情を浮かべている世純の方へとおずおずと歩み寄り――、
「あ、あの……しぇ……じゅんしゃま……ははうえの……たのみをきいてくだしゃらないの……でしゅか?」
舌足らずな言葉を彼へとかける様を見て、世純粋唐突の事に世純どころか、父である我ですら驚きの表情を浮かべてしまう。
今まで家族である我と魄しか録に関わろうとしなかった尹儒が――初めて目の前にいて眉間に皺を寄せているせいでぱっと見ただけでは怖そうな世純へと話しかけたのだ。
「い、致し方ないな……童子らの頼みとなっては断りようがあるまい――ほれ、手解きをしてやるからさっさと作り途中の着物を見せてみるがよい!!」
ぷいっ――とそっぽを向いてしまった世純とは裏腹に、その彼の言葉を聞いた魄と尹儒は――まるで太陽のように輝いている笑みを浮かべながら喜びを顕にするのだった。
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