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王と王妃と白い鬼の息子との徒然なる日々――【夏の月】

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ しゃくっ……しゃく…… 辺りに我が子が三角形に切られた水々しい西瓜を食べ散らかす音が響き渡る。まさか、これ程までに尹儒の食べ方が豪快だとは思っていなかった。顔中が西瓜の汁まみれとなり、だらだらと体にまで流れている。これでは、前掛けをしている意味などない。 「尹儒……もう少しお行儀よく召し上がりなさい――あなたは……この国の王子なのですよ?」 「おいしい、おいしい、ははうえ……しゅいか、おいしいーっ!!ははうえも、どうじょ……ちちうえも、どうじょ!!」 母である魄の心配する気持ちなどお構い無しに、尹儒は西瓜の汁まみれの顔をくしゃりて歪め、満面の笑みを浮かべつつ魄と我に西瓜を差し出してくる。 「ありがとう、尹儒……だが、母上の言うとおり――お行儀よく食べなさい」 「うーっ……は、はい……ちちうえ……」 水に浸けてから絞った拭布で、べたべたと西瓜の汁まみれとなっている尹儒の顔を拭きながら、こみ上げてくる笑いを圧し殺して我は利かん坊な尹儒に注意した。もし、ここで尹儒に注意しなければ隣にいる魄から甘やかすな叱られてしまうに違いない。 「あ、しぇじゅんしゃまー……しぇじゅんしゃまだっ……ほら、ちちうえ、ははうえ……っ!!あそこに、しぇじゅんしゃまがいるよ」 と、尹儒が嬉しそうに叫びながら目線をやった先には確かに世純がいたのだが、彼一人だけではなかった。 尹儒とあまり変わらない年頃に見える男童を抱えながら世純の隣を歩いているのは――我にとっては知り合いであり、魄にとっては大事な親友という存在である薊の姿だったのだった。

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